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砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

金・銀・銅の英語と日本語の対応

 翻訳的にはこうなっています。

金(きん)=gold(ゴールド)
銀(ぎん)=silver(シルバー)
銅(どう)=copper(カッパー)

 英語に対応する(音を合わせる)と、こうなります。

黄金(こがね)=gold(ゴールド)
白銀(しろがね)=silver(シルバー)
赤金(あかがね)=copper(カッパー)

 これだと「こ」と「ゴ」、「し」と「シ」、「か」と「カ」が合います。
 ただ、このように翻訳すると、あまりにも詩的になりすぎてどうにもうまくない。普通に金・銀・銅で問題ないです。
 デ・ラ・メアの詩「Silver」だったら多分そう訳すんだろうな。

Slowly, silently, now the moon
Walks the night in her silver shoon;

そっと、静かに、月がいま
しろがねの靴で歩く夜半(よわ)

 うまくいかないけど、一応音韻を合わせてみる。
 この冒頭は「s」の音が効果的に使われているんだけど、最初の「スローリィ」からうまく訳せないのよね。

レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』の冒頭はどう訳す?

 英語テキストはこんな感じです。

The first time I laid eyes on Terry Lennox he was drunk in a Rolls-Royce Silver Wraith outside the terrace of The Dancers.

 はい、もういきなり、「ロールス・ロイス・シルヴァーレイス」がわからないですね。今はウィキペディアその他でどんな車なのか画像で確認できます。映画の『ロング・グッドバイ』(1973年)では、時代背景が1970年代っぽいので少しレトロな車として見ることができますが、『ゴッドファーザー』(1972年)ではマフィアの車として、自由の女神像を背景に男が殺される場面で、非レトロ的に扱われています。

 清水俊二はこう訳しています。

『私がはじめてテリー・レノックスに会ったとき、彼は〈ダンサーズ〉のテラスの前のロールス・ロイス”シルヴァー・レイス”のなかで酔いつぶれていた。』

 村上春樹はこう訳しています。

『テリー・レノックスとの最初の出会いは、〈ダンサーズ〉のテラスの外だった。ロールズロイス・シルバー・レイスの車中で、彼は酔いつぶれていた。』

 自分だったらこんな感じ。

『はじめておれがテリー・レノックスを見かけたとき、あいつは飲みだおれてダンサーズのテラスの外、ロールス・ロイス・シルヴァーレイスの中にいた。』

 つまり、「はじめて」の「て」と、「The first time」の「t」が合うようにする。「he」は「イ」があるので、「あいつ」と訳したい。「he was drunk」だから、「あいつ」の「イ」、「飲みだおれて」の「ダ」を入れたい。
 面倒くさいでしょ。
 とにかく、冒頭は「はじめて」にしたいんだよなあ。

「I wish you are fear.」はどう訳す

 これはスティーヴン・キングの小説『シャイニング』(1977年)に出てくるフレーズで、日本語訳はどうなってたかな(あとで調べて追記します)。
 オリジナルはピンク・フロイドの『炎~あなたがここにいてほしい』(原題:Wish You Were Here)(1975年)ですかね。もっと古いのかと思ったら、今となっては同じぐらいに古かった。
 要するに英語の「h」と「f」を打ち間違えるとそうなる。
 でも普通、そのふたつって打ち間違えませんよね。「h」と間違えるのは「j」です。
 これはうまく日本語に直せない。意味が通じればいいんだから、「あなたが怖がってくれるといいんだけど」でも全然問題はない。
 まあ「ヒア」と「フィア」だから、「ア」の音があればいいのかな。「怖い」にはあるんだけど、「ここに」にはない。

あなたがいたらいいんだけど

 と訳すと、「ア」の音が「いたら」のところで入る(疑似的ですが)。
 そこから考えるとこうなります。

あなたがいたたいいんだけど

 で、実は日本語のローマ字入力では「r」と「t」は打ち間違える可能性がある場所にあります。
 つまり「itara」が「itata」になっても無理はない。

「スカボロー・フェア」の歌詞の合わせかた

 その前に、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」について。
 これは「沈黙の音」ですね。「サイレンス」の「イ」と「ちんもく」の「ち」、「サウンド」の「ド」と「おと」の「お」が対応してる。「静寂の音」「静けさの音」でも合う。

 で、ちょっと英語の「スカボロー・フェア」を引用します。

Are you going to Scarborough Fair
Parsley, sage, rosemary and thyme
Remember me to one who lives there
She once was a true love of mine

 これをこう訳します。

きみは行くの スカボロー・フェア
パセリ、セージ、ローズマリーとタイム
伝えてよ そこに住む
昔好きだった人に

 すると、「アー・ユー・ゴーイング・トゥ」の「ア」と「きみは」の「は」、「ゴ」および「トゥ」と「行くの」の「の」が合います。
 同じように「リメンバー」の「メ」と「伝えて」の「え」、「シー」の「シ」と「昔」の「し」、「トゥルー」の「ト」と「だった」の「た」が合います。
 おまけに、ちゃんと歌えます。
 こんなことを考えてるともう、普通の英語テキストでも1行日本語にしようと思ったら30分ぐらいかかる。

色の名前を英語と日本語で合わせる

 だんだん難しくなるわけですが。
 まず、
緑(みどり)=green
黄色(きいろ)=yellow
 と、このふたつは「り」「r」、「ろ」「lo」があるのでだいたい合わせられる。rとlは違いますけど、気にしない。
 肝心の、
赤(あか)=red
青(あお)=blue
 が合わないんだよね。
 幸いなことに、今は印刷用語を中心に、別の英語の言いかたになっています。
 つまり、
赤(あか)=magenta
青(あお)=cyan
 と、これなら「あ」「a」の音がどちらにもある。
 また、これも音読みなら、
緑(りょく)
黄(おう)
赤(しゃく)
青(せい)
 と、赤の音を合わせることができます。
 ただ、基本的にヨコのもの(英語)は、どんなに頑張ってもうまくタテのもの(日本語)にはならないと思ったほうがいい。

四季(春夏秋冬)の音を英語と日本語で合わせる

 自分のブログでは、原則として英語を使わないようにしています(英語テキストだともう、それだけで読む気をなくすんじゃないかと思うんで)が、今日は単語なんで許してください。
 翻訳として気になるのは、「音」が合っているかどうかです。難しく考えないで、英語に「ア」っぽい音があったら、日本語で「あ」の音がある語を選ぶ、ぐらいなところ。
 殺人事件はマーダー・ケース。ね、「さ」と「マ」、「け」と「ケ」が合ってますよね。そこがいいところです。
 で、春夏秋冬を考えると、こんな感じになります。

春(はる)=spring
夏(なつ)=summer
秋(あき)=autumn(fall)
冬(ふゆ)=winter

 まあ、これも半分入ってます。「る」と「ri」、「な」と「su」、でもって秋と冬には入ってない。
 音読みにすると3つ入ります。「春(しゅん)」と「s」、「夏(か)」と「su」、秋には入ってなくて、「冬(とう)」と「ter」。
 どうにも秋という語と英語とは相性が悪いんだなあ。
 夏はサンマで秋、秋はオータム(おーさむ)だから冬、という漫才がありました。
 で、これが色の場合だとどうなるか、という話はまた別の日にします。

一人称が「おれ」の『ロング・グッドバイ』が読みたい(レイモンド・チャンドラー)

 実はレイモンド・チャンドラーは、1959年に亡くなってますので、作品はパブリック・ドメインという扱いになっています。要するに、誰がどのように翻訳してもいい。おれが日本語で翻訳してもいい。
 1963年までに亡くなった人はだいたいそういう扱いです。
 そういう作家はほかにも、フォークナー、ヘミングウェイフィッツジェラルド、ハメットなどがいます。つまりだいたい、村上春樹が訳しているようなものは別に違う誰かが勝手に翻訳しても問題はない。
 ということで、誰か『ロング・グッドバイ』をウェブで新しく翻訳してくれる人、いないかなあ。いなかったらおれがやっちゃうよ? 一人称は当然「おれ」です。
 あるいは、さらに優雅で感傷的に、「ぼく(僕)」という一人称で訳してみるとか、さ。
 ただ、自分(ああ、この一人称は落ちつくのです)が訳すと、まずタイトルの「音」がうまく日本語にならない。
 つまり「ロング」だと「オ」の音、「グッドバイ」だと「ウ」「ア」の音を入れて訳したくなるんだけど、無理なんですね。「ながい・おわかれ」だと、「おわかれ」のほうに「ア」の音があるんだけど、「オ」の音がある、「長い」の類義語で、一般的に使われてる語が思いつかない。比較的近いのは「遠い」だろうけど、それは誤訳すれすれ。
 無理して日本語にするなら、『遠いさよなら(さよなら)』ですかね。
 この、日本語の「音」に関する話は、今月は少し続くかもしれないのです。
 関連過去記事:

sandletter.hatenablog.com