砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

山川弥千枝という作家・歌人と同人誌『火の鳥』について(高見順『昭和文学盛衰史』から)

半年ぶりに書いてみます。うまく行くかな。 高見順という作家による、大正末期・昭和初期からはじまる『昭和文学盛衰史』は、え、この人誰、みたいな人が9割、名前だけは知ってるけど読んだことはないなー、というのが1割ぐらいの構成で語られている、一個人…

落語の上下(かみしも)と『質屋蔵』

自分が一番好きな落語は上方落語の『質屋蔵』というのです。だいたい上方落語は江戸落語と比べると無駄に長いのが特徴で、江戸落語の『まんじゅうこわい』は、上方版だと途中に兄さんが幽霊話(という夢オチ)を語ったり、『そば清』の上方落語版『蛇含草』…

チンギス・カン『蒼き狼』(井上靖その他)は誤解釈なのか

1960年に作家・翻訳家・評論家で弁が立って喧嘩の強そうな大岡昇平は、井上靖の『蒼き狼』という、チンギス・カンの生涯を題材にした歴史小説を、こんなものは歴史小説ではない、と大罵倒して、井上靖の「これは創作(小説)だから」という自作弁明に対して…

ライトノベル・2020年1月の刊行分(簡単な内容紹介つき)

2020年1月に刊行されたライトノベルは156冊でした(アダルト系を除く)。【KADOKAWA・MF文庫】 ★『異能 』(落葉沙夢 著/\640) この世界には確実に主人公側の特別な人間がいる。でも、それは僕じゃない。僕…の中にも異能があるのか?予想を覆す怒濤の展開。審…

アンソロジーを読む楽しみ(伊岡瞬)

複数の作家の短編をまとめたアンソロジーは、自分が知らなかった作家に出会う機会があります。何なにこれ、この作家、どうしてこんなにうまいの、ってのがたまにあって、まあどれもそこそこ悪くはないかな、というのがアンソロジーなんで、けっこう個人作家…

書きグセ(西崎憲と夏目漱石)

『文芸翻訳入門』(藤井光・編、フィルムアート社、2017年)、「小説翻訳入門」(西崎憲)の章から。 『本章では翻訳小説の読者から、翻訳の勉強をはじめたばかりという方までを対象に、翻訳という作業のあらましを記そうと思う。 あらましを記すといっても…

アニメの舞台となっている高校(実在する系)で、もっとも偏差値の高いところはどこ

高校生を主役にした物語を考えていると、だいたいどのくらいのレベル(偏差値)の高校にすればいいのかが悩みどころです。 ただ、自分が経験した高校以上・以下の設定ってうまく作れないのよね。 自分の母校は、地方にいくらでもある、偏差値60~70の公立高…

頭の切れてる映像について

映画のフィルムの縦横比は、蓮實重彦によると馬の全身がうまいこと収まるサイズになっているんだそうです(スタンダードサイズだと「横縦比が1.375:1または1.33:1の画面サイズ」とのこと)。 今はまたちょっとあれこれ違うんですが、いずれにしても横に長い…

あまり更新してないと広告が載るみたいなので更新します

まあ、ざっくりとした生存宣言みたいなものです。 ちょっとした事故みたいな件で入院してました。 退院はなんとかスペシャル系のゴールデンウィーク前を目標にしています。 人にうつるとか、脳にダメージを受けるとか、すぐに死ぬとかいう病気ではないんです…

「鼠と竜のゲーム」(コードウェイナー・スミス)の邦題ってなんかおかしくない?

カルト的なSF作家であるコードウェイナー・スミスの「鼠と竜のゲーム」(The Game of Rat and Dragon)は、1955年に発表された短編です。 未来の宇宙飛行士は、宇宙空間で「竜」と認識できる謎の怪物に襲われて、発狂して死んでしまいます。 ところが、人…

否定形を否定形で訳さない(I don't think...)

こういう英文があります。 I don't think so. これは普通に訳せば、 「私はそうは思わない」 この訳しかたで女子高生でも大学生でも、翻訳家でも問題ない。ただねえ、「ドント」と最初のほうに否定が入る場合、「○○ない」と日本語の最後のほうに否定を入れる…

「物」が「人」に「○○させる」って表現、どうなの?

こういう英文があります。 The hammering anoyed her. これは、普通に訳すとこうなります。 「ハンマーの音が彼女をいらいらさせた」 こういう風に英文和訳すれば問題ない。 早稲田でも東大でも、オックスフォード大でも入れる(まあ外国には英文和訳の試験…

photo opportunityという語について

どうも、英語を日本語にする際に、英語っぽいものを混ぜてみると、今の日本語的にはうまく行きそうな気がするんです。まあ昔の英語だと駄目ですけどね。 で、photo opportunityという単語(二語による名詞)について。 普通に考えると、 「写真の機会(好機…

copyという語について

5か月ほど顔を出しませんでしたが、またぼちぼちはじめます。 何をしてたかというと、ライトノベルを読んで、翻訳の勉強して、物語を書いてました。 物語を書くのはブログテキスト以上に適当でいいんだけど、なんか横文字を縦文字にするスキルって面倒なん…

柱や仕切りその他縦の線に意味を持たせたくない場合は、その線に重なるように人物を撮る(ハドソン川の奇跡)

実写の映画は、アニメと違って背景や手前の小道具をごまかし切るということができません。つまり、普通に室内なら壁やドア、屋外なら木立やビルといった「縦の線」が入ってしまいます。「横の線」はまあ、入らないことはないんだけどそれなりにごまかせるん…

スタンリー・キューブリックのおかげで映画の構図が気になってしかたない

どういうふうに気になるかというと、人物が歩いてたり、会話してたりするじゃないですか。で、会話している場面とかで、背景や小道具がどのように置かれているか(人物にかかっているか)というのを、ちゃんと監督がコントロールしてるか(計算してるか)と…

レイ・ブラッドベリが1967年に他界していたら、と、ひどいことを夢想する

これはきのうのブログのつづきです。 sandletter.hatenablog.com SF業界の長生き作家というと、レイ・ブラッドベリとジャック・ウィリアムスンで、どちらも21世紀まで生きました。ブラッドベリは2012年、ジャック・ウィリアムスンは2006年没。 そこでちょ…

英米のSF作家と著作権(コードウェイナー・スミス)

素人の翻訳者が適当にネットで翻訳を発表するためには、著作権関係であれこれ言われないテキストを見つけることが必要になります。 日本の法律で著作権が保護されているのは、一応2018年2月の段階では「死後50年」、匿名の場合は「公表・公開後50年」という…

櫂は三年櫓は三月(らくだ)

落語『らくだ』は、長屋でひどく評判の悪い男・らくだがフグを食べて死んじゃって、その兄貴分と出入りの紙屑屋がしぶと(死人)の「かんかん踊り」でもってシブチンの大家その他からいろいろ葬礼(そうれん)の金と酒などを仕入れる話です。 これは上方では…

緩く教えて・時計の中の「殻竿」って何?

最近は古今東西のアンソロジー(短編集)をごちゃまぜにしながら読んでます。 その中の一冊にあったのが『アザー・エデン』(エヴァンズ&ホールドストック・編、早川書房、1989年)という本。イギリスSF傑作選というタイトルのとおり、(ほぼ)イギリスの…

緩く募集・1万光年の星へ一瞬で着ける方法の元祖

1万光年先の星へ着くには、光の速さで1万年かかります。 で、それだけの距離を移動しながら、同時に時間移動(1万年分過去に戻る)もすれば…。 1万光年先まで一瞬に行ける。 これは、映画だとヒッチコック『めまい』(1958年)の中で使われて有名になっ…

目で見ないとわからない落語(一目上がり)

落語は戦後からビデオが普及するまでの間は、ラジオやレコードの聴覚芸術として楽しまれることが多く、目で見て面白い話はともかく、目で見ないとわからない話は残らないことになってしまいました。 仕草で禅問答をするのが話のキモである「蒟蒻問答」は映像…

ペンティメント(リリアン・ヘルマン)

『ペンティメント』はアメリカの女性作家リリアン・ヘルマンによる小説で、日本では『ジュリア』という映画公開に合わせて、映画と同じ邦題で1978年に翻訳されました(パシフィカ)。そのあと早川書房の文庫にもなってます。 映画に言及する形で、映画評論家…

こわい話を書くときの留意点

新しい年(2018年)がはじまったので、ぼちぼちこのブログにもテキストを書くことにします。個人的なメモみたいな感じで、思いついたことを書くだけなので、思い出したら読んでみてください。 2018年の目標として「短編小説をいろいろ読む」ということにして…

物語がまたひとつできました

kakuyomu.jp その最後に書いたテキストと同じものを、また書いておきます。 * これは、自分がほぼ完成させた5番目の物語で、『物語部員の生活とその意見』からはじまる県立西高校サーガ(仮)のひとつです。その物語群の中では、同じようなキャラクターが…

桜と死

人が季節に秋を感じるより一足早く、桜の木の葉は色を変えて、だらだらと枯れ葉を落としはじめます。 春の桜の花が、命の盛りに急な病気で入院してそのまま帰らなくなった人のように残酷に散るのに対し、秋の桜の葉は、長患いの老人で、じわじわと弱って天命…

変な一人称(変態王子と笑わない猫)

アニメにもなったライトノベル『変態王子と笑わない猫』は、猫像が邪悪な願いを(というか、願いを邪悪に解釈して)かなえる、貧乳の子ふたりがメインヒロインという、貧乳好きにはたまらない(自分がそうだとは言ってない)物語です。 この物語のヒロインの…

こわい話を一つ書いたのん

それは日本で新しいホラー映画好きにとっては良質の、そうでない人にはそれなりのものが作られ、映画を見る人たちに支持されていた時代、20世紀末のことだった。 ある映画監督とスタッフは、学校の怪談を題材にした映画を撮るために、とある田舎の、廃校にな…

『七人の侍』の冒頭のシーンのテキスト化、1分で読めますか

自分が今作っている物語では、七人の侍の冒頭、キャストや説明文が終わって実写部分になってから1分の場面を、以下のように語る登場人物が出てきます。『空は低く、濃い灰色の雲が広がり、かすかなすきまから太陽が光っている。大地は黒く、背の低い草がま…

1秒でだいたい人はどれくらいの字が読めるのか。

自分はだいたい、ライトノベルは1分間で2ページぐらいの速度です。1冊読むのに150分、2時間半ぐらい。ライトノベル以外だとめっちゃ遅い、というかムラがあるのでうまくわからない。 1ページを42×17行(これは電撃文庫の字組ですが、最近の文庫ではもっ…