砂手紙のなりゆきブログ

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コードウェイナー・スミスとフォークソング(人類は衰退しました)

 昔、SFマガジンでSFスキャナーという英米の未翻訳SFを紹介するコーナーがあって、それは今でもあるんだけれど、1960年代はだいたい伊藤典夫という人がやっていました。
 仕事は遅いけれど文章はうまくて、26歳で『2001年宇宙の旅』を翻訳した人で、最近だと『たんぽぽ娘』というアンソロジーをようやく出して、それが出るまで河出書房新社奇想コレクションは完結させられなかったという、とにかくすごい人です。
 で、その人がSFスキャナーでコードウェイナー・スミスの新刊(多分『The Planet Buyer』か『Space Lords』のどちらか)の孫批評として(多分キングズリー・エイミスあたりなんじゃないかと勝手に思う)「フォークソングの歌詞みたいな小説」って紹介したんだけれど、この場合のフォークソングというのはサイモン&ガーファンクルやピーター・ポール&マリーやジョーン・バエズとかじゃなくて、明白にボブ・ディランですね。
 この時代のボブ・ディランってアレン・ギンズバーグと友達で、ランボーヴェルレーヌといったフランス象徴主義の詩を、多分英訳で(KennethWilkinson @kennethwilkinsoさんという親切なかたによると、多分「Louise Varese や Wallace Fowlie あたり」の訳で)読んで、あんなわけのわからない歌詞を作ってたんじゃないかと思う。だいたい、コードウェイナー・スミスにも「酔いどれ船」(Drunkboat)って、まんまランボーな短編あるし(発表はAmazing誌1963年10月号)。
 この時代のボブ・ディランの歌詞のわからなさは、まぁ彼の詩集でも読めばわかるんですが、『ウォーク・ハード ロックへの階段』って映画の中でもパロディにされていて、そこではこんな感じ。

郵便受けが ねじれた産道をしたたる
尻ナメ役が 怒りの感情に覆いをかける

ロールキャベツが ランドリーの恋人
ウサギのワナを ネズミが解明

Mailboxes drip like lampposts
In the twisted birth canal
Of the coliseum

Rimjob fairy teapots
Mask the temper tantrum

Stuffed cabbage is the darling
Of the Laundlomat

 …たわけてるとしかいいようがないです。
 一応、ランボーその他象徴派詩人の影響を受けた詩人というと中原中也なんですが、この人の詩はそんなにわかりにくくはないですね。
 今回アニメの話は、要するに電波っぽいアニメの曲はあるけど、いい感じに意味わからなくてトリップしちゃうのって、そういえば『人類は衰退しました』のED、「ユメのなかノわたしのユメ」がステキだなと思ったのでした。