砂手紙のなりゆきブログ

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手術台とミシンと雨傘(恋と選挙とチョコレート)

 ロートレアモンという人がいます。毎度同じ始まりですみませんが、フランスの詩人で、『マルドロールの歌』とか書いた人です。知ってる人は知ってるけど、多分シュルレアリストたちが彼のテキスト発見しなければ今でも誰も知らなかったんじゃないかと思います。
 彼の詩の中で、引用されることが多い(というより、他の部分の引用を知らない)これなんですが、

手術台(解剖台)の上での、ミシンと雨傘との偶発的な出会い

 本当はこのあとに「…のように美しい」という語がつくんですが、みんな、何がそんなに「美しい」のか、さらに知らないですよね?
 これは、実は主人公マルドロールが、イギリス人の少年マーヴィンについて語った語(の一部)なんです。要するに美少年に関するフレーズです。第六の歌のⅠ。
 で、アンドレ・ブルトンが言及しているのは『シュルレアリスム宣言』で、「シュルレアリスムオートマティスム)」「二つのイメージの偶然の出会い」と語り、マン・レイが「ミシンと蝙蝠傘」という題の芸術作品として視覚化しています。
 ところがですね、ロートレアモンのこのフレーズ、実は自動筆記(オートマティスム)とかそんなすごいことじゃなくって、当時彼が住んでいた町の企業・個人名鑑の広告欄に、「ミシン」「蝙蝠傘」「外科手術の道具」の3つが、たまたま並んでた、ってことが最近の研究で明らかになっています。最近っていっても世紀末ですけどね。
 ええっ、と思いますよね。それだったら俺たち毎日、新聞広告とかテレビCMとかで体験してるし。軽自動車の上での、食物繊維と住宅情報の偶発的な出会い、とか。あと多分明治時代の新聞広告見るともっと面白いかも。
 今現在、シュルレアリストが存在するかは皆目不明ですが、無意識なんてのはエロ親父のフロイトが適当にでっちあげたシロモノで、創作活動の補佐として「あり得ないものの組み合わせ」は意味あると思うんですが、組み合わせそのもので終わっちゃうとどうなんだろうね、って話にやはりなるんじゃないでしょうか。
 エントリータイトルのアニメははじめだけ見たけど、どうも根気が続かない。