砂手紙のなりゆきブログ

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誰が誰を何と呼ぶかという距離の問題(氷菓)

 人生で大事なことは、タイミングにC調に無責任ですが、アニメで大事なことはキャラ立てです。
「あんたたち、ちゃんとキャラ作りしてんの?」
 アニメ『ラブライブ!』5話で矢澤にこさんはこう言いますが、キャラ立て・キャラ作りというのは単純にキャラに「にょ」とか「だっちゃ」とか「ゲソ」とか言わせればいいってものではありません。
 また創作物においては「キャラがかぶらない」というのも非常に重要な考慮点です。実際には友達5人のうち3人メガネキャラだったり普通ですよね。でもたいていのアニメにはメガネキャラは1人です。
 さらに作家とかがキャラを複数出すときに考慮しておかないといけないのは、「誰」が「誰」を呼ぶとき、なんて呼ぶか、です。AがBを「お前」と呼び、BがAを「○○さん」と呼んでれば上下関係がわかりやすいですね。でもメモしておかないと忘れます。
 ブログテキストでは「表機能」というのがあるみたいなんで、ちょっとアニメ『氷菓』で作ってみます。すでにネットで存在しているかも知れませんが、気にしない。ちなみに『涼宮ハルヒの憂鬱』のメインキャラ5人では存在することが確認できています。

名前折木奉太郎千反田える福部里志伊原摩耶花
折木奉太郎 折木さん ホータロー 折木
千反田える 千反田 わたし 千反田さん ちーちゃん
福部里志 里志 福部さん ふくちゃん
伊原摩耶花 伊原 摩耶花さん 摩耶花 わたし

 だいたい、違いわかりますですかね。ポイントは、
・下の名前で呼び合っているのは折木奉太郎福部里志の間だけ
千反田えるは「○○さん」だけど、伊原摩耶花にだけ下の名前に○○さん
福部里志千反田えるとは少し遠い
伊原摩耶花は他の3人に対して微妙な距離の置き方
 という感じです。
 ところがですね、実は原作の『氷菓』では、千反田えるの家で文集『氷菓』の謎を話し合うときには、千反田える伊原摩耶花のことを「伊原さん」って言ってるんです。
 原作のほうは、

「それじゃあ、わたしの説は一時取り下げにして、伊原さんの報告を聞きましょう」

 なんですが、アニメのほうでは、

「では、わたしの説は一時取り下げにしますので、摩耶花さんの説を聞かせてください」

 なんです。少しお嬢様度がアップして、伊原摩耶花との距離が近くなってますね。
 さらにですね、実はアニメ『氷菓』では、「千反田さん」って伊原摩耶花が言ってるのも1回だけ聞けます。図書館で最初に2人が会ったとき。
 原作では、

千反田える「あ、あの、図書委員さん。もう訊いてもいいですか?」(中略)
伊原摩耶花「それで、文集だったわね。書庫を探せばあるかもしれないけど」

 アニメでは、

千反田える「あの、伊原さん、お聞きしたいことがあるんですが」(中略)
伊原摩耶花「それで、千反田さん、文集は書庫を探せばあると思うけど」

 なんです。
 原作読むといろいろ面白いです。
 たとえば、アニメ『とある科学の超電磁砲』では、「おねーさま!」と言ってるようにしか聞こえない白井黒子御坂美琴を呼ぶセリフですが、原作(漫画)では実は「お姉様」で、ミサカ妹が「お姉さま」って呼んでるんです。
 これはブログなんで、少し残る『氷菓』の疑問点書いておきますかね。
 図書室から毎週借りられる『神山高校五十年の歩み』、昭和四十七(1972)年の出来事として、

○二月二日、車輌暴走事故により一年生大出尚人君が死亡。追悼集会。

 というのがあるんですが、この人、古典部の顧問として名前だけしか出てこない「大出先生」と関係ある気がするんですよね。
 米澤穂信なんで、むしろ絶対に関係ある。多分まだ書かれてない小説の断片として。