砂手紙のなりゆきブログ

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シラクーザ(シラクサ)

 シラクーザ(シラクサ)はシチリア島の南東部に位置する、現在は普通の地方都市ですが、かつては古代ギリシアの移民政策によって作られた植民都市の中で最大の規模を誇り、マグナ・グラエキア(大ギリシャ)の中核となった都市でした。ペロポネソス戦争(前5世紀)ではアテナイを中心とするデロス同盟に対抗してスパルタ側につき、戦争はスパルタ側の勝利に終わりました。
 その後カルタゴとのシチリア戦争に対し、シラクーザを統治する軍人あがりのディオニュシオス1世はシチリア諸都市を連合させて抵抗勢力になりました。現在の世界史解釈では暴君ということになっていますが、この時代の史料は少ないので主観が入り込みすぎの気がします。
 日本人にとってディオニュシオス1世は、シラーの長詩「人質」(Die Bürgschaft)を素材にアレンジした太宰治「走れメロス」の暴君「ディオニス」の名前で知られています。まぁこの話がだいたいいつ頃の、どこの話なのかあまり知らないですよね。紀元前4世紀はじめのシチリアです。中国だと戦国時代の初期ですかね。
 シラーの「人質」の元となった古代ローマのヒュギーヌスによる『神話伝説集』には、ダーモンとフィジアス(ダモンとピンティアス)に関する伝聞が掲載されており、原典のアリストクセノス『ピュタゴラス伝』によると、この2人はピュタゴラス学派の人間です。これについては五之治昌比呂「『走れメロス』とディオニュシオス伝説」という、ネットで読めるテキスト(論文)がくわしいです。
 その他の有名人としては、ローマ軍と知恵で戦った哲学者というより科学者・アルキメデスが知られています。紀元前3世紀の終わりごろ。どういう状況で殺されたのかに関しては、俗説(伝聞)でしか記録が残っていません。日本人にとってはこのあたりの歴史は大ざっぱに世界史で習う程度で、情報の精度は不明です。