砂手紙のなりゆきブログ

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東宝爆発(岡本喜八)

 東宝爆発という言葉があります。嘘です。今作りました。
 これは東宝の爆発音がほとんど同一音源に由来しているものからできた(作った)言葉です。
 怪獣映画を何本か見ればすぐに分かりますが、甚だしいのは岡本喜八監督の『激動の昭和史 沖縄決戦』でしょうか。
 この映画、大作のフリをしていますが本当に予算それほどなくて、現地ロケも限られた人たちしか行っておらず、それなりに迫力ある爆発シーンの割には同じ音、ということで評判になりました。
 しかし同じ監督の『殺人狂時代』は、一応富士の裾野の演習ということで、同じ音でも諦めちゃうんですが、沖縄戦の場合は戦車だけでも数種類の砲弾あると思うし、戦艦の艦砲射撃も含めるともっとあってもいいと思うんですが、そんなの気にしない。『プライベート・ライアン』みたいな映画じゃないので、まぁ日本に限らずだいたいどの国も1970年代はあんなもんです。
 日本の場合は音源として使いまわされたのは木村哲人さんが作ったものなんじゃないかと思います。著書『「キムラ式」音の作り方』(筑摩書房)を読むと、昔の木村哲人さんがどんだけ大変な思いをして音を集めたかがわかります。ダイナマイトの音なんて、リアルで死にそうな体験しています。
 音(効果音)の難しいところは、リアルに撮ればそれはリアルに聞こえるかというと、必ずしも、というよりほとんど常に、そうは聞こえない、というところにあります。
 学校の校舎内や繁華街など、リアルに音再現したら雑音がうるさいだけで、人間の声なんてほとんど聞こえません。音は、拾って加工したり、別枠で作ったりしていかないといけないのは昔も今もそうなんじゃないかな。
 実際に音を作ったことないんで不明の点が多いんですが、確かに馬の足音、特に走る音なんて作るの大変そうですね。前足と後ろ足を、右手と左手で作るわけですが、映像を見ながら当てるわけなんで、そこらのドラマーより難しそうな作業の気がする。
 そんな苦労して身につけた馬の足音の効果音出す方法でも、現在はハリウッドですらそんなに必要のない役(多分「牛の世話係」レベル)になっていて、今は同じ嘘の音を作るにしても、爆発音のほうが需要多いんじゃないでしょうか。