砂手紙のなりゆきブログ

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ドストエフスキーの大ピンチ(賭博者)

 1866年の秋、ロシアの文学者ドストエフスキーは44歳にして生涯最大のピンチに陥っていました。悪い人に金を借りて返せなくなって、その年の10月いっぱいまでに新作を1本仕上げないと、過去の著作に関する著作権が没収されるうえ、今後9年間はただ働きをさせられそうになるというひどい契約が結ばれてしまっていたのです。
 あのドストエフスキーがひと月で長編書けるわけないですよね。おまけにその時は『罪と罰』も毎月連載の形で雑誌連載中。
 しょうがないので彼は、口述筆記という形を取ることにして、27日間で『賭博者』という小説を書き上げ(読み上げ?)ました。
 筆記にあたった人は速記術を身につけていた女性アンナ。彼女は彼の2番めの妻となり(最初の妻は病死)、それからあとのドストエフスキーはものすごく読みやすい(けど少し饒舌過ぎる気のある)長編を書く、というか口述することができました。
 悪い人以外は誰も不幸になってない、いい話です。
 まぁとりあえず、ドストエフスキー読むなら『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』って読んでいって、初期作品は後から読んだほうがいいと思います。
 プルースト失われた時を求めて』とか、マルクス『資本論』とか、最初が難しすぎて挫折する本で、途中から読んだほうがいい本けっこうあります。
 司馬遼太郎は『坂の上の雲』まで読めば、あとは読まなくてもいいかもしれない。
 ドストエフスキーの評論としては『ドストエフスキー詩学』(ミハイル・バフチン)というのが有名ですが、評伝に近い『ドストエフスキイ』(レオニ-ド・グロスマン)がけっこう面白かったかな。評伝って割と好きなんだけど、なかなか読み通せないので困る