砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

ヒトラーとマックス・オスボルン『ベルリン』(ヒトラーの秘密図書館)

 第一次世界大戦中の1915年11月下旬、ドイツ軍の一兵卒だったアドルフ・ヒトラーは4マルクでマックス・オスボルンによるベルリン建築史『ベルリン』を買いました。
 オスボルンは当時著名な美術評論家で、プロイセン第一主義の思想のもと、ベルリンの近代建築の「教条主義的ヘレニズム」を激しく批判し、それに反してカール・ドットハルト・ラングハルトと彼によるブランデルブルク門を「プロイセン的なるものの究極の真髄」と称揚しました。
 彼の建築観はヒトラーに大きな影響を与えましたが、オスボルンはユダヤ人だったため、その著作は1933年5月、ナチス・ドイツのプロパガンダのための焚書対象になりました。
 ヒトラーが所有していたオスボルン『ベルリン』はその他のヒトラーの蔵書約3000冊と共にベルヒテスガーデン付近の岩塩坑内に移され、最終的にはアメリカ議会図書館の蔵書になりました。
 ティモシー・ライバック『ヒトラーの秘密図書館』(文春文庫)によると、著者がその本を手に取ったときには「細かい砂が一粒、そのページのあいだからこぼれ落ちた」そうです。
 ヒトラーの蔵書は1万6千冊以上あったそうですが、そのほとんどは散逸して、1300冊ほどがアメリカ議会図書館と米国ロードアイランド州プロビデンス市にあるブラウン大学に保管されているとのことです。
(以上、『ヒトラーの秘密図書館』に依拠してます)