砂手紙のなりゆきブログ

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黒澤明『蜘蛛巣城』冒頭のセリフ

 黒澤明の映画はセリフが聞き取りにくいので有名です。舞台経験のある志村喬はともかく、彼と共演する三船敏郎の声が本当に何言ってるのかわからない。それもまた黒澤明っぽいので今まで誰も問題にしてなかったのか。
 ということで、数十年ぶり(少し大げさ)に、映画『蜘蛛巣城』冒頭での、馬による伝令のセリフがわかりました。

「この度(たび)、北の舘(たち)藤巻殿の謀反、寝耳に水のこととて、五の砦、四の砦はたちまち火をかけられ、三の砦は備えを整えるいとまもなく、ニの砦の三木義明殿は、崩れ去った三の砦の手勢を立て直し、ただ今獅子奮迅の最中にございます。一の砦の鷲津武時殿は五の砦、四の砦に火の手が上がると同時に、どっと国境(くにざかい)より押し寄せた乾(いぬい)殿の手勢およそ四百を一手(ひとて)に、…(鷲津の合戦の模様は)苦戦…」
「殿、御武運祝着に存じまする、ニの砦の合戦、三木殿の奮迅めざましく、敵もやや攻めあぐ折も折、一の砦の鷲津殿が乾の寄手を打ち破った勢い凄まじく、敵の横手より弓を射かけながら手勢を乗り入れ…、その鷲津殿の働きに、敵はもろくも崩れ去って、今や勝敗はところをかえたかと見えまする」
「殿! ただ今、鷲津殿、三木殿とその手勢は、逃げ足立った敵を北の舘に追い戻し、囲みを固めておりまする」
「殿! 殿! ただ今北の舘の藤巻殿、頭を丸めると称し、和を請うて参りました」

 映画『蜘蛛巣城』は、撮影のあまりの過酷さに頭のおかしくなった三船敏郎が、夜中に「黒澤の野郎、ぶっ殺してやる!」と言って黒澤邸の玄関で猟銃をぶっ放したことでも知られています。

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