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砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

漢字のルビ(ふりがな)のつけかた(光文社文庫版江戸川乱歩全集「二銭銅貨」)

 普通の活字の本では、難しかったり特殊だったりする文字にはふりがな(ルビ)がついています。
 このルビのつけかたに関しては、「日本語組版処理の要件(日本語版)」の「3.3 ルビと圏点処理」というのに目を通してみるといいんです(ネットにあります)が、大きくいって
・モノルビ
・熟語ルビ
・グループルビ
 の3種類があります。
「熟語」に「じゆく/ご」とルビをするのがモノルビ(漢字一つにルビが対応)、「じゆ/くご」とするのが熟語ルビ(複数漢字の組合せに対応)です。グループルビは「使用許諾」に「ライセンス」とルビをする場合ですが、今回は略。
 ぼくの手元にある、例えば『知られざる魯山人』(文春文庫)では「鮑形大鉢」のルビは「あわ/びが/たお/おば/ち」と、1つの漢字にルビ2つ入れて、最後の「ち」ははみ出してます。
 同じ本の「葉山」だと「は /やま」と、「は」のルビが「葉」の漢字の右上につきます。これは「肩付き(肩付きルビ)」というもので、岩波文庫でもちくま文庫でも、漢字1字にルビ1字だったらそう処理してます。
 ということで、今まで何の疑問も抱いてなかったんですが、光文社文庫江戸川乱歩全集第一巻『屋根裏の散歩者』冒頭の「二銭銅貨」を見て驚愕しました。

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 この文庫だと「窮迫」は「きゆう/はく」と、「窮」の字の前後に空白作ってて、「きゆ/うは/く」みたいに一文字はみ出してたりしない。
 さらに、「場末」は「ば/すえ」なんだけど、「ば」のルビは上下にルビ半字分の隙間入れてる(こういうのは「中付き(中付きルビ)」というものらしいです。
「日本語組版処理の要件(日本語版)」の「3.3 ルビと圏点処理」によると、

活字組版においては,肩付きとする方法が一般的であったが,今日では縦組においても中付きとする方法が徐々に増えている.ただし,親文字とルビの上端をそろえた肩付きの方が慣れており,読みやすいという意見もある.

 ということなんで、技術としては後発なのかな。ひょっとしたら最近できたレーベルの文庫だったら違うのかも。
 さらにすごいのはこのページにはないけど、「神楽坂」。これ、「神楽」に「かぐら」とルビ均等に入れて(「か」と「ぐ」、「ぐ」と「ら」の間にルビ半字分入れて)、「坂」は「ざか」と2文字分。普通こんなのどんな文庫でも「かぐ/らざ/か」ですよね。小川町なら「お /がわ/まち」。
 編集・校正の仕事には、こういうデザイナーや印刷の現場の人にとっては普通の技術が入ってないのですが、マニュアル的にはどの出版社も基準ありそうな気がします。
 ところがですね、漫画ってふりがなつき多いじゃないですか。これがことごとく中付きルビ。なおかつ、「使用例は少ない」と「日本語組版処理の要件(日本語版)」には記述されている「三分ルビ」なんかも平気て使ってる。
 漢字が「鬼龍院花子」なら、「き」「こ」を中付きルビ、「りゆう」を三分ルビにして、「き/りゆう/いん/はな/こ」です。確認できるかぎりどの漫画単行本もそうなってた。写植と活字の違いなのかな。今どき活字なんてどこも使ってないだろうから、三分ルビ使ってる本(文字の本)たくさんあってもいいと思うんだけれど見かけない。
 活字文化的には光文社のほうがひょっとしたら異色(異端)ですかね。

 今回のテキストはmurk(@peacete)さんの意見を参考にさせていただきました。
 あと、Togetterまとめだと「私の「組版・文字組み」関連の呟きから…」という面白いのもあるので探してみてください。

 

(追記)

「神楽坂」の「神楽」は「熟字訓(じゅくじくん)」と言われるもので、ウィキペディアでは「匕首(あいくち)」「明後日(あさって)」などがありました。

 

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