ちびくろサンボのあまり知られていない続編とそれに含まれている寓意について(ちびくろ・さんぼ2)
絵本『ちびくろ・さんぼ』は扱われているキャラクターの差別的扱いが一時問題になって読めなかった絵本ですが、今では普通にどの図書館でも読めるようです。内容はご存知の通り、黒人、というより有色人種の子供の「さんぼ」が、虎に帽子や長靴や傘を取られたあげく、虎同士が自滅してバターになって、それでパンケーキを食べる話です。
いろいろ脅かしてさんぼの持ち物を取る虎たちは、この絵本が作られた19世紀末を考えると「植民地主義の欧州列強諸国」、さんぼは「植民地」という見立てが可能な奥が深そうな話です。
この話にはあまり知られていないと思われる続編があり、日本でも『ちびくろ・さんぼ2』という題で翻訳が出ています。あらすじはウィキペディアにも載っていますが、だいたいこんな感じです。
・さんぼに「うーふ」と「むーふ」という双子の弟ができる
・さんぼは二人にミルクカップとか帯とかプレゼントする
・ところがある日、やしの木の上にすむ2匹のサルが、うーふとむーふをさらっていってしまう
・弟たちの涙でどのやしの木なのかはわかったけれど、下からはうまく助けられない
・そこへ大きなワシが通りかかって、さんぼの話を聞いて悪いサルを追い払う
・ワシはさんぼを背中に乗せて、弟たちが降りるのを助ける
・さんぼの家族は、ワシにお礼としてヒツジの足を2本あげる
・ワシとさんぼの家族はごちそう。サルはがっかり
…これはどう見ても「さんぼ」は中国ですね。
二人の弟は朝鮮と台湾。悪いサルは日本(とロシア?)。
さんぼを助けるワシはどう考えてもアメリカ。
ちなみに日清戦争は1894年、日露戦争は1904年、この本がイギリスで出版されたのは1899年です。
日本人が考えるとそうなるんだけど、イギリス人はもっと別の寓意見つけられるのかもしれない。
悪いサルを追い払うワシと弟たちの絵です。『ちびくろ・さんぼ2』瑞雲舎・2005年9月刊行。岡部冬彦・絵。