砂手紙のなりゆきブログ

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ところでみなさんは黒澤明『用心棒』の三船敏郎がどちらの方向から宿場にはいっていったかおぼえていますか

 用心棒は、まずとおくの山を見てから、画面の「右から左」にあるきはじめます。冒頭のキャストのところなんですが、じつは背中を撮ってるシーンからゆっくり角度を変えて、途中で「左から右」にあるきはじめるんです。ええっ? とかふつうに思います。いつ向きを変えたの? って。あるいてる向きは変わってなくて、カメラの向きが変わってるんですね。
 はじめは逆光で、それが冒頭の後半では影が道に対して直角の反対側に伸びる。不思議です。
 分かれ道のところでは木の枝を投げて、行く方向を決めて、背中を向けて「手前から奥」にあるきます。
 それから農夫が「左から右」にはしるのを追って、用心棒は農家の家に行きます。
 宿場の大通りにはいるときには、用心棒は「右から左」にうごき、大通りを「左から右」にあるきますが、とちゅうで犬がひとの手をくわえていくのを見て、反対方向(右から左)にあるく方向をかえます。
 さらに、十手を持った人間が左側からはしって来て、この宿場の事情を説明し、右側に抜けます。
 話を聞いた用心棒は、ふたたび向きを変えて「右から左」にあるきはじめると、丑寅の親分のところにいる用心棒たちにかこまれます。
 こうやって話してて、うまくながれがつたわるかなぁ。とにかく左右・正面のうごきや、奥行きを感じさせる構図など、何度見ても飽きません。話がおもしろいのとはべつに、映像的にもいろいろ勉強になります。
 しばらく映画における人物の「右(左)から左(右)」のうごきにかんする話がつづくかもしれません。