砂手紙のなりゆきブログ

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人物の走るショットで「右から左」の次に「左から右」に走る絵をつなげても、そんなにイマジナリーライン越えてる、って実写の場合には思わない(二十四の瞳)

 映画『二十四の瞳』は小豆島を舞台にした戦前・戦後の泣かせる話ですが、島の中のショットに関しては木下惠介監督は「北が奥」というこだわった地形にもとづく撮影をしていません。また、道路を走ったり歩いたりする人たちを描いている場面では普通に「右から左」へのショットの次に「左から右」へ走ったり歩いたりするショットをつなげたりしています。実写映画では背景と観客の理解力が補佐しあって、「行って帰る」ショットにはならず「行きつづける」映画にちゃんと見えます。
 たとえば、大石先生の一人娘・八津が柿の木から落ちたため死んでしまうショットでは、八津を抱いた人と人たちがまず「右から左」に走り、次に病院の壁のところを「左から右」に走りますが、視聴者はべつに「なにか変だな」とかは思いません。
 もっと極端なのは、大石先生が戦後ふたたび岬の分教場に通うことになって、雨の日にもとのおしえ子からもらった自転車を乗りまわすショットですが、木下惠介は、
1・左から右
2・左から右(手前から奥のほうへ)
3・右から左
4・左から右(奥から手前へ。ここでバスに抜かれる)
5・右から左(自転車から降りて押してる大石先生)
6・左から右(海岸を走る)
7・左から右→ずーっと左手奥に消えるまで撮ってエンドマーク
 と、じつに小豆島の風景を美しく見せながら撮っています。
 そして、大石先生が画面の中で行ったり来たりするようには見えず、普通に分教場に行くように頭の中で整理できます。
 虚構度の高いアニメでは「?」マークの連続するようなショットになるでしょうが、実写ではじつはたぶん脳内で理解できるようにできてるんじゃないかと思います。

 

(追記)

 なんか人気呼んだみたいなんで、関連記事もリンクしておきます。

ところで皆さんは映画『二十四の瞳』の大石(小石)先生の名前を知ってますか

 

 せっかくなので、アニメ・映画・漫画その他の演出上の右・左について言及したブログテキスト(関連記事)もリンクしておきます。
アニメも映画も、人物を右から左に歩かせすぎ。あと多分生徒会室は校舎の西の端にあって、ダメクラスは東の端にある

右からくる座頭市と左からくる眠狂四郎(正義と悪)

なぜ映画『ゴジラ』(1954)はこわくて、『パシフィック・リム』(2013)はそんなにこわくないか

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「敵は左、ヒーローは右」の法則は幼児期の体験・記憶から(パシフィック・リム)

ヘンゼルとグレーテルの「お菓子の家」は舞台のどっちがわに立ってるか、あとえらいひとはどうして舞台の右側にすわるのか

機関車トーマスは線路の上を左から右にうごき、きかんしゃやえもんは右から左にうごく

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