砂手紙のなりゆきブログ

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「おしん」の起源は、おシンデレラ(坪内逍遥)

 ウィキペディアには坪内逍遥の翻案によるシンデレラの物語が「おしん物語」(1900年)として国語の教科書になってる、って書いてあるんだけど、近代デジタルライブラリーでは見つかりませんでした。
 いちおう「坪内博士国語読本字引. 高等科巻1,2」というのはあって、それの二十一課・二十二課で「おしん物語」というのが確認できます。一部現代かな漢字になおして引用します。

『ここには、おしんという心がけの良い娘が、幸を得たことが書いてある。これは、外国の作りばなしを書きなおしたものである』
『四十二枚の表にあるのは、おしんが、だいどころにいるところへ、べんてんさまが出て、馬車をこしらえるところ』

 …べ、べんてんさま?
 ディズニーアニメのシンデレラは、魔法使いのおばあさんが「ビビデバビデブー」とか言って魔法を使うんですが、なんでシンデレラにそんなに親切にするのか不明ですね。
 おばあさんの名前が「フェアリー・ゴッドマザー」という仮名なんで、裏切り者のベッドに馬の首とか置く人なのか。
 とにかくコーサ・ノストラみたいな組織があって、いろいろ抗争とかするんだろうな。
 あと多分まぁシンデレラから十分な報酬はその後もらうんじゃないかと思う。
 見た覚えがないので機会があったら見てみます。
 これのオリジナル、というか似たような話としては、ギリシャの歴史家ストラボンによる「ロドピスの靴」というのがあって、どうも新潮選書『世界のシンデレラ物語』(山室静・1979年)に掲載されているらしい。
 まぁネットでもタイトルで検索すれば拾えますが、富豪の奴隷だけど娘のようにかわいがられていたロドピスのバラの靴を、鷹(と書いてありますが、ホルス神だったら隼ですよね)が持っていって時のファラオの前に落とし、ファラオは神のしるしとしてその靴の持ち主をエジプト中から探し、きさきとする(ロドピスはあまり積極的ではなかったらしい)、という話みたいです。
 ギリシャ語もその本も読んでないんですが、ネットテキスト見た限りでも、そのままアニメにしても今なら問題ないような内容です。
 まぁ当時のディズニーアニメ見るような人たちは「おれの知ってるシンデレラじゃない」とか怒るような層なんだろうな。
 なお、近代デジタルライブラリーで確認できる限りでは、『西洋古事神仙叢話』(菅了法 (桐南居士) 訳・1887年)というのにも「シンデレラの奇縁」というのがありました。

『或る富豪の細君ながながのいたつきにて最早全快もおぼつかなく見へけるが終焉(いまは)の際にのぞみてひとりの娘を枕辺ちかく呼びよせ涙ながらに』云々

 この話では、シンデレラを助けるのは生みの母親の墓から育った樹に住みついた鳩で、亡き母の愛情、ということを考えるとこのほうがすっきりします。

『鳩やこひこひ この木にとまれ
 揺(ふる)へよふるへよ この木をふるへ
 ふるひ落とせよ 金銀を
 雨の降るほど 金銀を』