砂手紙のなりゆきブログ

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さだまさし「防人の詩」って本当に防人の人が作ったの?(二百三高地)

 映画『二百三高地』(1980年8月)を見ました。だいたい日本の戦争映画は夏に公開されることになっていて、『八甲田山』(1977年6月)もそうなんですが、夏より冬~春にかけての感じがよく出ているような気がします。お正月に公開される戦争映画は夏~秋に撮影されているので、その季節がよく出てるかな。映画の内容はまぁタイトルの通りで、日露戦争における旅順攻略の話をえんえん、3時間にわたって見せられる映画です。しかし話のテーマは「戦争とは嫌なもの」という反戦映画なのか、「国を守るためには戦わなければならない」という愛国映画なのか、今となってはとんと不明なんだな。CGもドルビーもなかった時代なので(日本で最初にドルビーが使われた映画は1981年の『連合艦隊』だそうです)、大量の人員を導入して、安っぽい機関銃の音でたくさん人が死にます。第一次総攻撃が失敗して、みんな死にかけてるところに、さだまさしの歌(防人の詩)が流れてきます。
 元歌は万葉集の16巻第3852番だそうです。

鯨魚取 海哉死為流 山哉死為流 死許曽 海者潮干而 山者枯為礼
(鯨魚(いさな)取り 海や死にする 山や死にする 死ぬれこそ 海は潮干て 山は枯れすれ)

 多分『海行かば』を意識してるんじゃないかな。そっちの元歌は万葉集の18巻「賀陸奥国出金詔書歌」。

海行者 美都久屍 山行者 草牟須屍 大皇乃 敝尓許曽死米 可敝里見波 勢自

 気になったのは、さだまさしの「防人の詩」の元歌って、本当に防人の人が作ったの? ってことです。どうもよくわからない。さだまさしの全体の曲の解釈は「生きるものは死ぬが、次に生まれるもの(世代)もある」という実にいいテーマを持った曲で、東日本大震災の復興映像なんかに重ねて流すと涙出てきます(単なる愛国歌ではありません)。
 防人の歌としては、むしろ以下のものが有名ですかね。

可良己呂武 須宗尓等里都伎 奈苦古良乎 意伎弖曽伎怒也 意母奈之尓志弖
(唐衣裾に取り付き泣く子らを置きてぞ来のや母なしにして) 他田舎人大嶋

 で、映画の中では母を亡くした子供たちを施設に預けて戦場におもむく金沢の友禅染の職人・米川乙吉という人物が出てきます。脚本の人(笠原和夫)は、史実以外にもいろいろなもの入れて(夏目雅子のエロシーンとか)、物語にしています。
 しかしこの書き文字、怖すぎます。ぼくが今まで見た中でも最も怖い書き文字だった。

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 写植などでないことは、ひらがなが少しずつ違っていることでわかります。