砂手紙のなりゆきブログ

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図書館職員の仕事は図書館職員を増やすこと(新版図書館の発見)

 前川恒雄・石井敦『新版 図書館の発見』(NHKブックス、2006年)を読みました。『図書館戦争』以来わりとこの手の本を読んでみることにしています。要するに「図書館とは何か」みたいなことについて書いてある本いろいろ。
 前にも述べましたが、現在(2014年)の日本の何かについて知るには、リーマン・ショック(2008年)と東日本大震災(2011年)の影響が大きすぎるので、それ以前に出版されたこの本も、そのためには役に立つわけではありませんが、図書館という存在の歴史的変遷(特に戦後から1980年代まで)はなかなか整理されていて面白かったです。
 しかし、いち利用者としてどうも気になるのは、この人は利用する人よりもそこで働く人の権利拡張・維持について語るのが好きな人なのかな、ということでした。
 仕事として司書・図書館員は確かに重要な専門職だと思いますし、1980年代以降なし崩し的に国が支えるべきものを民営化・民間委託して、変な合理化が進んだのに異議を唱えるのもわかるんですけどね。しかし、以下のテキストなどは、誰にどうアピールしているんでしょうか。

『図書館の仕事は長年にわたる積み重ねで成り立っている。今現在の仕事が、図書選択にせよ、サービスの内容にせよ、何十年にわたる業務の蓄積の上にあり、その蓄積を理解していなければ、現在の仕事ができない。これをするのにニ、三年で職員が替わっていては、現在の仕事が満足にできないだけではなく、過去の遺産を台無しにしてしまうことにもなる。残念ながら、このことは、図書館の外からは非常に見えにくいし、結果があらわれるには何年もかかる。知性と使命感と経験とを求められる司書が、安上がりを第一にする委託の中で育つのはまず無理である』(P196~197)

 なんか、炭鉱労働者とか蒸気機関車機関士の主張を聞いている気分になります。アニメーターや豆腐屋みたいに委託というか個人営業が基本の商売の人はそんなことあまり言わない気がする。言わないけれど「知性と使命感と経験」がアニメーターや豆腐屋に求められていないかというと、そんなこともない。
 なにもかももう、金がうまく回らないのが悪い、って感じですかね。図書館員が「原則無料でなるべく利用者の要求に応える」という図書館の性質上、各自治体が赤字の額を減らすため民間委託になっちゃうのは仕方ないんじゃないの、とかも思う。
 どのくらい金がないかというと、ぼくの知っている図書館のひとつは、数年前から「新しいCD」は買わないことにしてしまいました。創元推理文庫ちくま学芸文庫なんてとんでもない。入れているのは岩波文庫だけ。