砂手紙のなりゆきブログ

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酸性の反対なのだの中性紙

 19世紀は科学技術の進歩の時代なので、20世紀に発展する技術のほとんどはその時代に工夫・考案されまして、安価に紙を製造する(大量生産する)方法もそのひとつでした。
 1840年、ドイツのフリードリヒ・ケラーが、製紙原料に(今まで使われていたぼろきれに替わって)木材を使用する技術を発明し、さらに1844年には砕木機を開発しました。
 木材は針葉樹(ナーデルホルツ、N材)と広葉樹(ラオブホルツ、L材)が使われましたが、針葉樹に多く含まれるリグリン(木質素)が紙の強度のさまたげになるため、それを化学的に取り出す、というか溶解する技術が生まれ、化学パルプが作られるようになりました。
 1851年にイギリスのヒュー・バルガスとチャールズ・ワットは水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を使用するソーダパルプを発明しました。さらに1967年にはアメリカのベンジャミン・C・ティルマンが亜硫酸パルプ(サルファイト、もしくはサルフェートパルプ)を発明しました。その後1885年に、スウェーデンのC・F・ダールは水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの混合液を使用する硫酸塩パルプ(クラフトパルプ)を発明し、現在の紙の多くはこの手法が使われています。
 19世紀初頭より、印刷インクによる紙のにじみを避けるため、紙の材料にロジン(松脂)をまぜ、それを定着させる材料として硫酸アルミニウムが使われました。硫酸アルミニウムの硫酸イオンは空気中の水分と結びついて硫酸となり、紙のセルロースを分解するものとして作用しました。
 酸性紙ではない炭酸カルシウムを使用した中性紙は、20世紀中頃より一般に使われるようになりました。
 まぁだいたい、1970年代ぐらいまでの書籍はそんなわけでボロボロです。昔の週刊誌なんて、国会図書館は保存してあっても素人には実物は触らせてくれない。野田昌宏さんがパルプ雑誌を集めていたころ(1960年代)は、たぶんまだ今ほどボロボロになってはいなかったんじゃないかと思う。
 1000年前の、和紙に筆で書いたもののほうが、50年前の週刊誌より状態は悪くなっていないはず。