砂手紙のなりゆきブログ

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橋本治『桃尻娘』の高校生女子的文体って今読むと完全にオカマ言葉だよね

 橋本治桃尻娘』(1978年)は日本で初めて女子の性欲について書かれた小説として著名です。この小説があったからアニメ『ヨスガノソラ』(2010年)も窪美澄の小説『ふがいない僕は空を見た』(2010年)もあったんじゃないかと思う。一応その前に『マカロニほうれん荘』(1977~79年)で、沖田総司の写真を見て煩悶する中嶋敦子もいたような気がするし、元祖は与謝野晶子あたりみたいな気もするのであまり深く考えない。普通の日本の少年少女漫画は、男だってめったにマスかかないぐらい非性的娯楽読み物です。
 小説『桃尻娘』の冒頭はこんな感じ。

『大きな声じゃ言えないけど、あたし、この頃お酒っておいしいなって思うの。黙っててよ、一応ヤバいんだから。夜ソーッと階段下りて自動販売機で買ったりするんだけど、それもあるのかもしれないわネ。家(ウチ)にだってお酒ぐらいあるけど、だんだん減ったりしてるのがバレたらヤバイじゃない。それに、ウチのパパは大体洋酒でしょ、あたしアレそんなに好きじゃないのよネ。なんていうのかな、チョッときつくって、そりゃ水割りにすればいいんだろうけどサ、夜中に冷蔵庫の氷ゴソゴソなんてやってらんないわよ、そうでしょ。やっぱり女の喉って、男に比べりゃヤワに出来てんじゃないの、筋肉が違うとかサ。』

 これが16歳、高校一年の主人公・榊原玲奈の饒舌ですが、今の時代にこんな言葉使うなんてオカマしかいないわよ、イヤね、変なこと言って、気を悪くしちゃったかしら。
 それはともかく、洋酒を飲む父親と夜中に自動販売機で酒を買う(酒が買える)高校生。昭和テイストたっぷりです。これが書かれた11年後に平成がはじまるなんて当時誰も思っちゃいなかったろう。
 テキストの中の差別語規制コードはゆるやかで、バージンを失う玲奈さん、その際にダメダメ! って言うのは「処女がそんな事言ったら屠畜場で殺される豚と一緒じゃない」とか、売春行為に関しては「あんな駅前の喫茶店にたむろって煙草ふかして、「ジョシコオコオセイ」って書いてあるチョンバッグ抱えて、中から「売春」を取り出してみせるなんて」とか(チョンバッグとは、朝鮮学校の生徒が使用していたことによってつけられたという説もある俗称で、今ではめったに見ることはできません)、クラスの子は「ウチのクラスの牧村久実なんかマンガ気違い」とか、付箋いろいろ貼りたくなって困る。