砂手紙のなりゆきブログ

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ヒッチコックのとんでもないミタメ(下宿人)

 ヒッチコックは映画監督で、常に新しいことをやっていながら、それがあまりにもさりげないことなうえ、あらゆる映画監督に演出を模倣されたために、今見るとどうもすごい監督に見えないところがあります。彼の映画を評価するためには、同時代の映画監督がどのような映画を作っていたのか、を映画時代史的に考えなければならないんですが、ヒッチコックは世代が変わるごとに新しい世代に再発見されてる印象があります。手塚治虫の漫画みたいなもんかな。
 映画『下宿人』(1926年)はまだ彼がイギリスにいた時代のサイレント映画で、毎週火曜日に金髪美人が殺される、という事件と、それに合わせてやってきた不気味な、というか不思議な下宿人とを描いた映画ですが、その中でヒッチコックはとても変なことをやっています。つまり、上の部屋に住む下宿人の足音が表現できないので、床(天井)を透明にして、天井の照明がゆれるのにあわせて、その上を歩かせる、という床のミタメ。
 ミタメというのは、わかりやすく言えば「カメラの視点」ですかね。
 もっともヒッチコック自身も「あれはサイレント映画だからやった演出で、そうじゃなければやらない」とは言ってます。

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参考記事:

「ミタメ」(カメラの視点)の話とアニメ『アマガミSS』