スコセッシの映画『ディパーテッド』と○○業界
(今回はタイトル作品のネタバレになっている部分もあるのでご留意ください)
映画『ディパーテッド』(2006年)を見ました。
マーティン・スコセッシ監督の作品は最近『シャッター アイランド』(2010年)を見て「えー? まだこの人生きてたの?」から「えええっ? なんかクリストファー・ノーランとかウェス・アンダーソンとかリチャード・ケリーみたい! 全然枯れてないどころか、新しい映画センス研究してる!」って驚いたところなんで、21世紀の彼の作品はあまりよく知りません。
主人公はギャング組織に忍びこむタフな警官ビリー・コスティガン(レオナルド・ディカプリオ)のほうなんですが、話の中では平行して逆に警察組織に忍びこむギャングの内通者でエリート警官コリン・サリバン(マット・デイモン)も物語られます。
で、サリバンの子供のころは教会のミサの手伝いやって、ギャングのワンマン・ボスであるフランク・コステロ(ジャック・ニコルソン)のセリフを「それはジェイムズ・ジョイス」って言ってたりする。これはどう考えてもマーティン・スコセッシ自身じゃないですか(もう一方のコスティガンのほうは、ホーソーンなどを暗唱します)。映画のかわりに犯罪がサリバンの生涯の友になっているという。
…でもそうすると、コスティガンは映画監督テスト(なんてものあるのかな)に合格した監督見習いで、プロデューサーと撮影所長に「ロジャー・コーマンの撮影技法を盗んで来い」って言われる人だよね。ジャック・ニコルソンもロジャー・コーマンが育てた人らしいんで、すごく腑に落ちる。
で、中国人とマイクロプロセッサの裏取引をする、ってのは、これは『インファナル・アフェア』(2002年)の原作を買い取るところをメタにギャング映画にしてるんだな。
気になるのは、コリン・サリバンの文学・宗教的知識が警官(刑事)としての今の生活に全然反映していないところ。もっと借りたマンションの中が本だらけでもいいし、仕事場の机の上にはショーペンハウアーの本なんか置いてみちゃったりしてもいいんじゃないの。メインのふたり、頭いいはずなのに、どちらもさっぱりそう見えない。