砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

丹羽文雄『人間・舟橋聖一』が面白すぎて困る

 丹羽文雄は昔の文豪で、やはり昔の文豪だった舟橋聖一がライバルにしていた(と丹羽文雄は書いている)人ですが、彼は舟橋聖一よりだいぶ長生きしたので、舟橋聖一の死(1976年)後に『人間・舟橋聖一』という本を書きました。
 ぼくが読んだのは昭和62(1987)年・新潮社刊行のもので、雑誌「新潮」に1984年から86年にかけて『小説・舟橋聖一』として断続的に書かれたのをまとめたものなんですが、もう面白いのなんの。あまりにも面白いのでこれネタに何日かブログ書いてみよう。
 まず丹羽文雄は、物語を文藝春秋社の慰安旅行で熱海に行っで、舟橋聖一の昔の女だった芸者・梅吉との間の話からはじめます。彼女はまず、舟橋聖一の話す丹羽文雄像について、彼女の口でこう述べさせます。

「丹羽先生がどんなに憎かったのか、あの先生(注:舟橋聖一)の気持ちがよく判ります。だって丹羽先生に、あの先生は敵いませんわ。まったくちがうんですもの。丹羽先生は女にだらしなくて、乱暴であり、すぐにいやらしいことをする人間であり、ずぼらで、何ひとつまとまったことの出来ない人間であり、何となく信用の出来ない男であり、でたらめをいう男であり、第一口のきき方が不愉快になる男だ。ねちねちとした性格で、女のくさったような奴だ。女の噂もきかないではないが、相当に悪辣なこともして来たのではないか。女があの男といっしょにいると、話題がなくて、すぐに退屈して、息のつまる思いがするという」

 それに対して丹羽文雄は「笑いながら聞いていた。悪くいうために、もうすこし上手につくっていえないものかと、舟橋の創作能力の貧困さを嗤ってやりたかった」と感想を述べ、以下、舟橋聖一に対する大悪口が展開されます。
 つくづく、人はライバルと思っている人間より先に死んではいけないな、と思った。
 続きはまた明日。

 

関連記事:


文豪・舟橋聖一の武勇伝(日本文芸家協会編)


文豪・舟橋聖一の武勇伝(税金編)