砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

長谷川町子とふたつの出版社

 長谷川町子志賀直哉の『赤西蠣太』を読んで福岡の浜辺を散策しながら、小説の登場人物「小江(さざえ)」(映画でも小説でも非常に重要な女中ですが、映画では「小波(さざなみ)」になっています)にヒントを得て、海産物が人の名前になっている4コマ漫画『サザエさん」』の連載をはじめました。
 長谷川町子は長谷川家の次女で、上に鞠子、下に洋子という3姉妹で、『サザエさん』の漫画を出版するために母と姉が主役となって姉妹社という出版社を設立しました。印税だけじゃなくって本の売上も入ってくるわけだから、これは儲かる(当初は儲けるためにはじめたわけでもなかったようです)。
 三女の長谷川洋子は上の姉妹とはふとしたことから喧嘩になって、長谷川町子の死すら教えてもらえなかった、と『サザエさん東京物語』(2008年朝日出版社)には書かれています。余談ですが朝日出版社というのは朝日新聞およびその関連会社である朝日新聞出版は全然関係がありません。
 長谷川洋子は1960年代に自分の出版社を持ち、1980年代から精力的に心理学・精神分析学関係の本を出版しました。出版社の名前は「彩古書房(さいこしょぼう)」で、社名は彼女の娘・彩子と「サイコ」に由来しています。
 一般の読書人には『ニューヨークの24時間』(千葉敦子、1986年)で知られてますかね。けっこう売れたそうです。あと、『うい・あー・のっと・ざ・わーるど』(北山修、1985年)とか。
 しかしそれ以前に、自分の趣味で読みたい本を出したくて出版社を作って実際に出してたとは知らなかった。
 具体的には『鴎外荷風万太郎』(小島政二郎、1965年)、『食いしん坊交遊録』(小島政二郎、1984年)、『名士の食卓』(大河内昭爾・編、1986年)とかかな。
 ここらへんからざっくり推理すると、長谷川洋子さんは子供が独立したのでもう「家族のために飯を作るのが面倒くさくなった」ので上のふたりの姉妹とは縁を切った、と推測。勝手な推測です。
 ただ、子供たちが独立して夫婦が飯の件で別居・離婚するって割とよくあることらしいので気をつけたほうがいいですよ。要するに、男女問わず自分で自分の飯は作れるほうがいい。
 なお、彩古書房からは1冊、翻訳本が出ています。映画女優で『スター・ウォーズ』のレイア姫だったキャリー・フィッシャーのドラッグ中毒だったころの回想録『崖っぷちからのはがき』(1989年)です。この話は『ハリウッドにくちづけ』(1990年)というタイトルでメリル・ストリープ主演のハリウッド映画になりました。