砂手紙のなりゆきブログ

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雑誌業界が景気よかったころの話

 今はもう大半の雑誌は見る影もない衰退ぶりですが、1980年代から1990年代の中ごろぐらいまでは日本の雑誌の黄金時代でした。黄金時代というのは、そこに集まる人間の間で金が回るということで、回る金の元になったのは広告代理店を通して企業の宣伝・広告費でした。
 集英社のVジャンプ(1993年創刊)は、ジャンプ系雑誌に対するゲーム業者からの広告依頼が多すぎて、それの対策のために作られたようなものです。
 その時代の多くの雑誌は広告・宣伝媒体として刊行され、製作費のかなりの部分がその収益によってまかなえたので、雇用的には「売れる雑誌を少しだけ持つ」のより「少しだけ売れる雑誌を沢山持つ」ほうが、編集者・デザイナー・ライターを支えることになりました。ページを厚くして、増刊を出して、増刊を新雑誌にする。黄金時代です。
 その時代、一番金をもらっていたのはレイアウター(ページのレイアウトを決める人)で、次が編集者・イラストレーター・スタイリスト、一番少なかったのは名前が雑誌に出ないライター(テキスト制作者)です。
 ライターは、レイアウターが決めた字数に合わせて字を書くのが仕事で、字数に合わせてレイアウターが文字組みを考える、ということは滅多にありませんでした。
 雑誌関係にコネのあって、そこそこテキストが作れる学生や、広告代理店の人間がそのような、誰が書いたかわからない(誰が書いてもどうということのない)テキストを書いて年収○百万になりました。
 デザイナーは年収○千万です。
 1990年の秋に出た「HanakoのMANGA」という増刊号は、しりあがり寿吉田秋生江口寿史高野文子の雑誌連載をまとめたものですが、各漫画家への原稿料はその雑誌の広告収入でまかなえました。要するに雑誌を買った人が出す金は、書店・取次の取り分を除くと全部会社の儲け。
 広告を出す人が金を出さなくなると金の回りが悪くなって、みんなの取り分が減ることになるので、今は広告の取れるような雑誌関係者は誰もそんなに儲かっていません。どんどん廃刊(休刊)になってる。
 広告の取れるようなネット関係者も安く使われてる。
 雑誌の衰退は時代の流れだろうけど、ネットの仕事が安いのはデフレ、というか、あまり金を回している人が多くないせいですかね。