砂手紙のなりゆきブログ

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デヴィッド・O・ラッセル監督の奇妙なショット演出と切り返し(アメリカン・ハッスル)

 映画『アメリカン・ハッスル』(2013年)はアメリカの詐欺師とFBIのおとり捜査を題材にした話ですが、最近見た映画の中では妙にカメラの動きが気になる映画でした。こういうのって何と言えばいいんだろうなあ。わざと人とは違う風に撮ってるのか、普通に撮ろうとして違う風になっているのかわからないけど。
 例を挙げて語る(動画で語らないでテキストで語る)のは大変だけど、ちょっとやってみよう。
 主人公の詐欺師アーヴィン・ローゼンフェルド(クリスチャン・ベール)が自分の経営しているクリーニング屋の金庫に行って拳銃を取ってくるショット。映画がはじまって1時間22分ぐらいのところです。
 まず、主人公は画面の向かって右側のドアを開けて部屋に入ります。
 それから奥の電源を入れると照明が明るくなって、奥(画面の左)から少し手前(画面の右)に移動。
 さらに左から右へ、主人公は移動するんだけど、カメラもそれに合わせて動く。
 右の角に達したらさらに手前へ移動して、主人公はややアップ気味になる。
 それから今度は右から左へ移動して、最後は主人公の背中。
 ここまで全部ワンカットでやってて、金庫の前で本当に短いカットが挟まって、扉をあけるカット。
 拳銃を取り出したあと、カメラに寄ってきて(奥から手前に動いて)ため息をつく主人公。
 客観的主観描写というか、ちょっとドキュメンタリー風に見える。
 なんというかな、非常にうまく撮れたときのロバート・アルトマンみたいな感じ?
 これをたとえば『戦火の馬』(2011年)の、主人公の母親が夫(主人公の父親)の勲章を取りに行くショットなどと比べると、スピルバーグ監督の映画はわかりやすいんだけど少し古典的すぎるかな、とか思ってしまう。
 ただ、『戦火の馬』のはじめのところって『緑園の天使』(1944年)を意識した作りになってるんで(障害物を飛び越えられない馬とかね)、スピルバーグが手抜きをしたのか、というとそんなことはないと思う。