砂手紙のなりゆきブログ

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落語「はてなの茶碗」の原案をテキスト化するだけの簡単なお仕事(宿駕籠の寝耳に水の洩る茶碗の掘出し)・その2

 これは昨日のつづきです。

sandletter.hatenablog.com

 …ということで、世にも珍しい三島茶碗を見つけた人はどうしたかというと…近代デジタルライブラリー『滑稽文庫. 第3編』、コマ番号20から。

『…連の中に、まんがちなる欲人有之候故、態と其分にて帰り申候、貴殿急に彼所に参られ庵主の気の付ぬやうに少金にて貰ひ請申さるるやうに、御差略なさるべく候尤欲の世の中、此十兵衛殿へも御沙汰御無用に候道具屋太郎助殿、龍斎よりと、読もはてず正作小首をかたむけ此名前の人々へ対しては、不実のやうなれども、思ひがけなく此状の我等手に入る事、是天道より授け給はる幸ひなりと、押いただき懐中し、扨駕の者に申しけるは、我等あとの建場に用事ありしを失念したれば是より立帰りたし、こなた衆には最早暇をやるぞと、駕を其所におろさせければ、駕かき共はヤレそれは御大儀な事と、笑止なる顔はすれども、から身で帰へるを喜ぶ様子、正作はそれより一散に、最乗寺道へと心ざし件の草庵、尋ねゆき、品よく庵主に貰い受けて金子拾両相渡し、二色の道具を受取て鎌倉へ立帰り、御屋敷方へ三島茶碗を金五枚に売渡し定家の三首ものは表具として是も過分の金子にかへて唯取る如き金儲けしたりし話を、通り筋の孫太郎聞て此程は段々身上ぐだり坂となるにつけ、人の仕合したるを羨ましく、我等も何ぞ堀出しして、大金を儲けんと、目を皿になし心懸けるが、もとより正作とは至つて懇意には有ざれども、毎日湯屋にては暑い寒いの挨拶はする中、或日鶴ヶ岡の社内にて出会ひ茶店に立寄り、両人休息しながら、さまざまの世間話して居たるが正作あるじに向ひ、水ひとつと望ければ茶店の親父さし心得、大きなる粟田焼の茶碗に水なみなみとくみて持来るを、正作心よげに呑で仕舞ひ後にてその茶碗を、ためつすがめつ何扁もくりかえしくりかえし見けるを、孫太郎傍に有て思ふよう、扨は此正作は数年小道具商売をなし相応に物の目利もすればこそ此間の堀出しせし様子、今あの茶碗を不思議なかおして、捻くり廻して見たるこそ、唯の茶碗にてあるまじ、』

 ということで続きます。
 鎌倉の正作はまんまと三島茶碗と定家の書き物で儲けて、この人が落語の「はてなの茶碗」の茶金さんと知れます。まあ京都でも鎌倉でも道具屋商売をやるには悪くないところ。
 その話を聞いた近所の孫太郎という人物が、茶店で一緒にお茶を飲んで、正作が不思議な顔で茶碗を見る、ということで話が進みます。
 今の調子でテキスト化していくと、あと2回です。

 

続きはこちら。

落語「はてなの茶碗」の原案をテキスト化するだけの簡単なお仕事(宿駕籠の寝耳に水の洩る茶碗の掘出し)・その3