砂手紙のなりゆきブログ

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落語「はてなの茶碗」の原案をテキスト化するだけの簡単なお仕事(宿駕籠の寝耳に水の洩る茶碗の掘出し)・その4

 これは4回めです。

落語「はてなの茶碗」の原案をテキスト化するだけの簡単なお仕事(宿駕籠の寝耳に水の洩る茶碗の掘出し)・その1

落語「はてなの茶碗」の原案をテキスト化するだけの簡単なお仕事(宿駕籠の寝耳に水の洩る茶碗の掘出し)・その2

落語「はてなの茶碗」の原案をテキスト化するだけの簡単なお仕事(宿駕籠の寝耳に水の洩る茶碗の掘出し)・その3


 道具屋の正作と、掘り出し物で儲けようと考える孫兵衛の会話が続きます。近代デジタルライブラリー『滑稽文庫. 第3編』、コマ番号22から。

『…但しは我等素人ゆへ、わざとそのやうに云はるるや、何として又廿四文の此茶碗をあのやうに念入て、見られしは如何にと不審云へば、成程成程その訳は此茶碗に入った水が、手のひらへ洩につけハテ面妖な何處に穴も見へぬに、水の洩るは如何にぞと、それゆへに茶碗の内外に心を付て見たるなれど、得ては薬の好く廻らぬ焼物何處ともなしに水の洩るものを、それとも知らず貳百疋出されしとは気の毒千萬、必竟われらが様子ありげに見し物ゆへの事なれば、近頃笑止の至り此茶碗われら貳百疋にて買受申すべしと云ふに、孫太郎兎角その真偽を疑ひ、外の目利者に見せたる所、いよいよ粟田焼にきはまり十六文か廿四文の折紙附これは一杯はまりしと、後悔するゆへ正作しきりに気の毒に思ひ、金貳分遣し、其茶碗を引取りたりしが、正作兼てさる高位の堂上がたに、御懇意を蒙る御方ありしに此茶碗の話を、如何しては聞こし召し及ばれ甚だ興に入らせ給ひ、其茶碗御覧ありたき由、御懇望に依て、はるばる都にのぼせ御覧に入れしに、鶴ヶ岡と云ふ銘を下され、事のあらましを前書として、御歌を添られ、又時の関白殿よりも御短冊を下されける故茶碗は僅の値安きものなれども、高位の御方々の御短冊添し故、忽ち三拾両に望人あれども正作是家の宝なりとて、敢てはなさざりけるとぞ。実にや隠徳は陽報の基なりと云へるが如く、正作思ひも依らず洪福を得たる、芳運の目出度と孫太郎が不運のほど、すること成す事、斯る違ひある禍福のほどこそ是非もなけれ』

 ということで、本当にほとんど落語「はてなの茶碗」と同じですね。落語のほうはもう少しオチがついてるが、あのオチで本当にいいのか今イチ自信がない。