物語学(ソラリス)
その古い図書室には「愛」からはじまり「笑い」で終わる、一連の物語に関する研究者の書物が存在していた。
…というのはスタニスワフ・レム『ソラリス』(1961年)におけるソラリス学の劣化コピーテキストですが…「悪者(わるもの)」で終わっていたほうがいいのかな。
物語ははじめ、本当に起こったことを伝えるものとしてはじまり、そのうち嘘(実際に起こったことではないこと)でも語っていいことになり、回想や第三者の視点を入れることによって物語とそれを研究する人間の数は劇的に広がったのですが、「信用できない語り手」というメタな手法が、推理小説やフォークナー以来普及したため、現在物語について言及・研究する人間は、物語のメタ構造、つまり「物語について物語ること」という手法を取り入れざるを得なくなりました。
これは物語が2000年かけてやったことですが、映画はそれを100年でやりました。
世界最古の物語はホメーロスが伝えたものですが、メタな記述で曖昧にする手法はそれとほぼ同時に生まれました。
要するに「これは人から聞いた話なんだけど、実際にあったことなんだ」話法。