砂手紙のなりゆきブログ

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sendからcallへ、そしてまたsendへ(フロム・ミー・トゥ・ユー)

 1962年10月5日にイギリスで発売されたビートルズの最初のシングル盤には、B面に「P.S.アイ・ラブ・ユー」という、どこをどう考えても手紙の歌が入っています。
 また、1963年11月22日にイギリスで発売された2枚めのアルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』には、「オール・マイ・ラヴィング」「プリーズ・ミスター・ポストマン」という、どう考えても手紙の歌が2曲入っています(1曲は別の人の作詞作曲)。
 そこで使われているのはsendという単語です。
 ところが、1963年5月27日に発売されたアメリカのシングル盤の2枚めでは「フロム・ミー・トゥ・ユー」という、手紙だか電話だかわからない歌が入っています。
 ちょっと歌詞を一部引用すると、

『Just call on me and I’ll send it along』

 なんか「なんでも(電話で)言ってくれたら、なんでも(手紙というか小包で)送るよ」みたいな感じになってます。
 要するに、1960年代前半のビートルズは、アメリカでは電話に関係する曲が売られたイメージがあります。
 時代的にもその時代は、確かにラブレターからラブコールみたいに、アメリカの恋人同士の連絡としては、電話に変わっていったみたいで、電話でキッス、みたいなバカな歌が作られてたようです。
 クリスマス・セールス用アルバムとして、ビートルズは1964年12月15日、アメリカ盤で『ビートルズ '65』というのを出すんですが、それの最初の曲はなんと「ノー・リプライ」という、どう考えても電話の歌になっています。一時期は留守番電話のBGMとして、個人が勝手に使ってたらしいですが、今はもう留守番電話というものが遠いものになりました。
 なんでビートルズがそんなにせっせと手紙を書いた(書く曲を書いた)かというと、国際電話は高くつく(貧乏時代)のと、時差の関係(ワールド・ツアー時代)でなかなかコンサート・ツアー中には電話がしずらかったらしいんですね。
 ただ、アメリカの一般市民で同じ町内の恋人同士は、時差も電話代もたいして関係ない。
 問題は、電話をかけるとまず最初に相手の母親が電話に出てくる、ということだけ。
 現代は電子メールの時代なので、ふたたびcallからsendの時代になっていると思います。