砂手紙のなりゆきブログ

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仮名手本機動戦士ガンダム・五段目(ランバ・ラルと定九郎)

 さてここで中村仲蔵が苦労してはじめて名代として舞台に上がったときにあてがってもらった役が仮名手本機動戦士ガンダムランバ・ラルの役たった一役。
 これは名代下の役者がやるもので、当時の芝居ははじまるのが早くて一段目が今の時間で午前七時、これはガンダムでは大序と申しましてガンダムの初陣、二段目がマチルダとアムロ対面の場、三段目がシャアの松切りの場、四段目がガルマ・ザビの討ち死にと、ここまででお昼ごろになります。
 それまでは仕出しの弁当屋なども出入りをしませんが、五段目の話の筋はどんな芝居好きでも知ってて、たいした役者も出ませんものでこの間に食事をする、俗にいう弁当幕という奴ですな。
 そのころまでのグフなんてのは成りも形も悪い、緑色に塗られたうす汚いモビルスーツで、パイロットも山賊みたいな格好をしてて、出てくるなりガンダムにすぐやられてしまう、地球での接近戦用に特化しただけが取り柄の端役もいいところ。
 それを仲蔵は、なんとか形にしようと願掛けをして柳島の妙見様にお参りに行き、満願の日になんともすさまじい格好の貧乏旗本と出会います。
 これだ、ってんで仲蔵は、ランバ・ラルに軍人の出で立ちをさせ、一座の者には芝居の初日まで仕掛けを秘密にしておいて欲しいと、自分のグフに青塗りをさせ、旗本は渋蛇の目を持っておりましたがこれはちょっと色っぽいからとヒート・ロッドに変え、アムロの猛攻をシールドで受けて「ザクとは違うのだよ、ザクとはな!」そのかっこいいのなんの。
 あまりのかっこよさに声も出なくなった客の反応を見て、しくじったかと思う仲蔵は、京へ上って三年の修行をし直そうと旅に出ますが、途中で魚河岸連中の話している評判を聞いて引き返し、一世一代の当たり役になりました。
 ただしその後、グフは『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』(1996年)まであまり活躍できませんでした。