砂手紙のなりゆきブログ

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声優はセリフがない部分では呼吸を調整して、ちゃんと息を吸ってから話す(大塚明夫の声優業と合気道)

 有名な声優・大塚周夫の息子である、やはり有名な声優の大塚明夫は、空手やトラックの運転手などをやったあと舞台役者になり、その後声優になった人で、著書『声優魂』(2015年、星海社)では後にならった合気道について以下のように述べています。P73

『空手では、相手と対峙したとき、まず自分が一本叩き込むことが肝心です。相手を後手にすることで、自分が戦いをリードし、優位に持っていくことができる。しかし合気道は、先に仕掛けた方が絶対に負けるのです。間合いをとり、相手がどういう風にやってくるのかを心と体感覚の両方でとらえなければ技はかかりません。そもそも、空手などと違って自分から戦いを仕掛ける武道ではありませんから、攻守に五十:五十の力を振り分けるのではなく、守に100使うことができます。それによってセンサー力が高まり、ああ突きがくるな、蹴りがくるな、ということがわかる。落ち着いていられるのです。これは自分の中で面白い発見でした。』

 この後大塚明夫は「相手の芝居を見て演技をする」という舞台の楽しさについて語ります。
 また、別の箇所では以下のようなことも述べています。P106

『アフレコは確かに難しい作業です。最初のうちは緊張しますし、音も出しづらい。絵に合わせることに精一杯になって、芝居するどころではなくなります。
 具体的に言うと、自分の台詞まで息を止めて待つ態勢になってしまう人が多いです。でも、息をしていないと実は人の台詞は聞こえてきません。意味が頭に入らないのです。そして、口パクが始まって終わるまでの間にきれいに台詞を入れよう、という意識だけだと、発する台詞も死にます。人にものを言っている、という状況じゃなくなりがちなのです。新人は特に、口パクを外して怒られたら嫌だなとか、下手だと思われたくないとか、色んな不安でそうなってしまうんですね。
 ですから、そうなってしまっている子を見たときは、「人の台詞を聞くときにちょっと息を吸ってごらん」などと声をかけるようにします。そうすると、他の役者の台詞が聞こえてきて少し楽になるようです。』

 これは、洋画の吹き替えなどを見るときにそういうようなこと確認しながら見るようにならざるを得ない。