砂手紙のなりゆきブログ

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町へ入っていく男ではじまる話は、町から出ていく男で終わらないといけない(伏線回収)

 野村美月『下読み男子と投稿女子』(2015年、ファミ通文庫)は、投稿原稿の下読みをする男子高校生と、投稿原稿を書き続ける女子高校生が伏線を回収する話です。
 設定◎、キャラ○、ストーリー○~△、ぐらいって感じですかね。
 でも、厳しいこと言ってないでとりあえず褒めれば一次選考に通るぐらいの作品はできる、というのはあるし、作者はいい人だということもわかるんですが、回収される伏線はこれだけなの? というのと、思ったよりもっとくだらなくなってないのが個人的に残念。
 作中作の話というのは、『僕は友達が少ない』の、隣人部によるリレー小説みたいにくだらなくないといけないんだけど、そういうのは多分ラノベの一次選考には通らない。
 気になるのは冒頭、ゴールデンウィーク前のクラスメイトたちの会話です。

「今年のゴールデンウィークは、軽音部の先輩たちと野外ライブのハシゴするんだ」
「オレは、こないだ合コンしたグループでキャンプだ! 狙ってる子いるんで、超頑張る!」
「いいなー。オレなんか親が温泉ネットで知り合った温泉マニア同士で、長期休暇は強制的に家族で温泉だぞ。高校生にもなって、父親の薀蓄聞きながら温泉につかるの、むなしー。たまには友達と別のところへ行きたいぜ」
「……オレは彼女と遊園地行って、水族館行って、映画だ」

 …この子たちはその後どうなったのか、この本の中では全然語られてない。要するに伏線回収されてない。
 ちょっとだけ、夏休み終わったあとの会話でも書いておいてくれるといいんだけどな。

「今年の夏は、軽音部の先輩たちとライブやったんだけど、あとで対バンの相手にオレだけボコ殴りにされた」
「オレは、こないだキャンプしたグループと一緒に、水害にあったキャンプ地のボランティア活動した。狙ってた子とは別の子ができたけど、まあいいか」
「オレなんか温泉で知り合った友達のところへ遊びに行った。男だけど(注:この子の両親は混浴の温泉ばかり行ってたのか)」
「オレは彼女と海行って、動物園行って、花火見たら『これからは友だちとして』って言われて元カノになった」

 男子高校生が投稿原稿見たらギャルゲみたいなのと太宰治みたいなのと中二病みたいなのと時代劇みたいなのがあって、それがみんな同じ高校の別々の女子高校生で、みんなで投稿部作るという話はどうでしょう。TK部みたいな名前で。