砂手紙のなりゆきブログ

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ジョージ・ワシントンと桜の木に関する謎とメタ解釈

 ジョージ・ワシントンは、お父さんが大切にしていた桜の木を切ってしまって、正直に名乗りでたところ「お前は正直な子だな」と言って褒められました。
 この話はしかし、後の時代になって作られた嘘の逸話だということが、ネット時代には知れ渡っています。
 要するに「人は正直でなければならない(嘘をついてはいけない)」という話が嘘。
 世の中には江戸しぐさや「一杯のかけそば」みたいに「いい話だったら嘘でもいいんだよ」的なものはありますが、これは困る。
 それに対して、一休さんの水飴の話は、「水飴は子供が舐めると毒である」と嘘をついた和尚さんが、子供たちに大切にしていた茶碗を割られたうえ、「死のうと思って水飴全部舐めました」と言われてふんだり蹴ったり、という、実にわかりやすい話です(どうせ嘘だろうけど)。
 要するに、正直で褒められる話より、嘘をついてひどい目に会った話のほうが、嘘の話としてはわかりやすい。
 でもジョージ・ワシントンは本当は桜の木を切ってなかったとしたらどうでしょう?
 でもって、お父さんがそれは嘘だと知ってワシントンを許したとしたら?
 なんか歌舞伎『勧進帳』の富樫みたいなお父さんです。
 そうなると「いい嘘ならついてもいい」という、この話が嘘でも許せる話になります。
 これが裁判だと、「少年の持っている斧は珍しいものだというが、普通に町で売っている」「木を切るときに上から下に切っているが、斧の使い方を知っている者はそんなことはしない」「目撃証言が怪しい」とか、12人の陪審員がもめて、結局リーズナブル・ダウトで無罪になります。