砂手紙のなりゆきブログ

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市川崑の映画に関する本人の一言集・6(『悪魔の手毬唄』から『おはん』まで)

 引き続き『完本・市川崑の映画たち』(市川崑+森遊机洋泉社、2015年)の中から、自作の映画に関する市川崑自身の話を引用してみます。
 引用は大変大ざっぱなものなので、この本そのものを読んで、さらに市川崑監督の映画を、見れるものがあったら見ることをおすすめします。

・『悪魔の手毬唄』(1977年)
 『犬神家の一族』がヒットしたので、急きょ持ち上がった企画。ロケ地は『東北の神武たち』で馴染みになった甲府です。この映画で富さん(若山富三郎)に今までやったことがないような演技をやってもらって、それが縁で『火の鳥』にも出て貰いました。スタンバーグ監督の『モロッコ』は、使用料が高かったけどラストシーンを使いました。
・『獄門島』(1977年)
 これ、割と好きな話なんだけど、横溝正史さんの了承を得て、犯人を変えさせて貰った。横溝さんの描写は、小説では成り立っても、映画では無理なことが多いんです。と、文句を言いながらもやってのけました。
・『女王蜂』(1978年)
 『火の鳥』と撮影がクロスしてきたので、新東宝時代からの知り合いの松林和尚(松林宗恵監督)に演出の応援を頼みました。これがシリーズの最後だと思って、今まで犯人だった女優みんなに出てくれと声をかけた。
・『火の鳥』(1978年)
 手塚治虫さんの原作に惚れ込みすぎていて、距離を保てなくて失敗しちゃった。アニメと実写の合成をしてみたんだけど、アニメがちっとも仕上がってこないんで実写にしたりとか大変だった。合戦シーンはちゃんと走れる馬がもういないので、編集でなんとかした。
・『病院坂の首縊りの家』(1979年)
 原作では年老いた金田一耕助が出てくるんだけど、舞台は昭和20年代のときの話に絞らせてもらった。まあ、横溝さんの小説はどっちにしてもややこしいから、ややこしいままで押し切っちゃえということで。
・『古都』(1980年)
 百恵ちゃん(山口百恵)という人は、ぼくは演技者としても高く買っていた。この映画の前に出演交渉も何度かしたんだけど、ホリプロが「主演」じゃないとだめだということで断られた。原作を読んでみたら、川端康成さんの失敗作じゃないかと思うぐらい乗れなかったけど、もう企画が進んでた。百恵ちゃんの映画を演出できたんで、満足はした。
・『幸福』(1981年)
 水谷豊君に、どうしても一本監督してほしいと頼まれて作った。ストーリーとしてはエド・マクベインの87分署シリーズ、『クレアが死んでいる』を持ってきて、親子の話と強引に合体させた。最初は白黒でやろうと思ったんだけど、テレビ放映の際に高く売れないからということで、白黒みたいなカラー(シルバー・カラー)という手を使った。たいへん手数がかかるものです。これは僕が本当に作りたかった企画だから、いろいろと感慨がある。
・『細雪』(1983年)
 助監督時代に原作を読んで、監督になったらいつか映画化したいと思っていた。東宝の50周年記念映画にどうだ、とプロデューサーの馬場和夫君と話をした。夏十さんと話をして、もうこういう女性は現在にはいない、ということにして作ることにした。冒頭の座敷のシーンは、外の桜の紫色を入れると、どうしても顔がうす暗くなるので苦労した。衣装は三松という着物メーカーの社長の斉藤(寛)さんが、まともに買ったら何億円というものを提供してくれました。きっちりしたカット割りはエディターの長田(千鶴子)君の功績ですよ。ひとコマの長さは肉眼で見ています。
・『おはん』(1984年)
 夏十さんを亡くして肺炎を患って、東宝の松岡社長と娘の舞子と一緒にヨーロッパ旅行に行って、帰ってきて作った。全体の構成を原作とは少し変えて客観的にして、ラストも変えた。有楽町マリオン日劇東宝柿落とし作品ということに途中からなって、もともと地味なシャシンだから困りました。プロデューサーの市川喜一ちゃんに話して、五木ひろし君に主題歌を急きょお願いしました。五木君はいい気風の人で助かりました。

 あと3回ぐらいで終わる予定です。

関連記事:

・市川崑の映画に関する本人の一言集・1(『花ひらく 眞知子より』から『足にさわった女』まで)

・市川崑の映画に関する本人の一言集・2(『あの手この手』から『ビルマの竪琴』まで)

・市川崑の映画に関する本人の一言集・3(『処刑の部屋』から『ぼんち』まで)

・市川崑の映画に関する本人の一言集・4(『おとうと』から『東京オリンピック』まで)

・市川崑の映画に関する本人の一言集・5(『トッポ・ジージョのボタン戦争』から『犬神家の一族』まで)