目玉焼きと王様
昔読んだ本(童話)の話です。
召使いや兵士に囲まれて、城の中で退屈に暮らしていた王様がいました。
朝食を食べたあと、晩の食事は何がよろしいでしょうか、とコックに聞かれた王様は「目玉焼き」と答えました。
その後、特にすることもない王様は、にわとり小屋の鍵がかかってないのに気がついて、扉を開けたため、100羽のにわとりがいっせいに逃げ出しました。
困ったことになったと思った王様は、あわてて宮殿の自分の部屋に戻りましたが、そのあとに一羽のめんどりがついてきていることに気がつきました。
王様はめんどりに「いいか、わしがにわとり小屋の扉を開けたのは絶対に秘密だからな」と言って、クローゼットに閉じ込めました。
その後、家臣たちは逃げ出したにわとりをつかまえるために大変苦労したあげく、王様に報告しました。
「大変申し訳ありません、いたずら者がにわとり小屋の扉を開けてしまったため、夕食の目玉焼きは無理かもしれません。99羽のにわとりは見つかりましたが、最後の一羽がどうしてもみつかりません」
王様は、がっかりしながら言いました。
「そうか。ところで最後の一羽はわしのクローゼットにいるかもしれないな」
確かに王様の言うとおり、召使いはクローゼットで一羽のめんどりと、それがうんでいた卵を見つけました。
「おお、これはありがたいことです。これで目玉焼きが作れます」
その日の夕食は、サラダとスープと目玉焼きでした。いくら小さな王国でももう少し料理は出たと思うんですが、昔の目玉焼きは高級料理だと思っていてください。
が、王様がその目玉焼きの黄身にフォークを入れると、黄身の中からこういう声が聞こえました。
「いいか…わしが…にわとりごやの…とびらを…あけたのは…ぜったいに…ひみつだからな…」
忠実なコック長と給仕と、その場に居合わせた召使いたちは、その声が聞こえなかったことにしてくれました。
この話の教訓は、
・にわとりは秘密を守れない
・夕食のメニューは目玉焼きではなくオムレツにするべき
ということです。
本日は855文字です。
(追記)その後、この話は「おしゃべりなたまごやき」(寺村輝夫)だということがわかりました。市川大河@ArbUrtlaさんどうもありがとうございます。