砂手紙のなりゆきブログ

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映画の歩く速度とフィルムの速度(遠い雲)

 映画は1秒24コマで、フィルムの長さは35ミリの通常のもので1.5フィート(0.4572メートル)です。要するに16コマで1フィート(0.3048メートル)。
 人間の歩く速度は、1分80メートルで不動産業界は計算しているので、1秒1.33メートル(約4.36フィート)かな? だいたい女性ならその距離を3歩、男性なら2歩で歩くことになります。
 人間の歩くところだけを60秒撮ると、だいたい女性なら180歩にならなくはないんですが、それはウォーキングしているレベルの早さなので、あまり採用はされません。
 映画『遠い雲』(1955年)は、飛騨高山を舞台にした恋愛映画で、夫を亡くした寺田冬子と、その幼なじみの石津圭三が話をしながら延々と不動橋を渡る、映画史上屈指のダラダラ歩く場面がありますが、この場面は、ざっと計算すると以下のとおりです。
 橋の場面の時間は1分33秒。
 寺田冬子(高峰秀子)は122歩。
 石津圭三(田村高廣)は113歩。
 男性は女性に合わせて、すこしゆっくり歩くことになりますし、この場面はふたりとも和服なのでそんなに早くは歩けません。
 しかし、1秒で約1歩半というのはかなり遅いですかね。
 不動橋の長さはだいたい55メートルぐらいで、それの50メートルぐらいを歩くから、1分35メートルぐらいの早さ。
 この映画のこの場面に使われるフィルムの長さは約140フィート、42.7メートルぐらいです。
 アニメの場合はどうなんだろうな。
 多分ヒロインが女子高校生で、男子高校生に何か言われた場合は、
「なによ、あいつったら、あんなこと言って」
 と、秒速1.2メートルぐらいの早さで、歩幅は60センチぐらいで4歩歩きます。
「なによ/あいつったら/あんなこと/言って」で4歩。
 キャラを動かす速度は、背景に影響します。
 つまり、1秒でどれくらい動くかによって背景の幅が決まる。
 細田守監督のアニメ『時をかける少女』(2006年)の絵コンテでは、主人公と男子2人が帰り道、塀の前と空き地をダラダラ歩くシーンがありますが、その会話は、空き地の場合こんな感じです。
功(男子の一人)「気をつけろよ。このあともなんかあるかも」
真琴(ヒロイン)「もうないです。あっちゃ困ります」
千昭(男子の一人)「でも何もないのにぶっ倒れるか普通」
真琴「何にもなくないよ」
 絵コンテではこれを11秒の設定にしてありますが、どうも実際に見ると7~8秒ぐらいなんですね。
 歩く歩数は、ヒロインで数えると11歩。
 1歩1秒だとどう考えても遅いんで、いろいろあったんだろうな。空き地の幅の長さを実際に歩くとどうなるか、みたいな。
 こんなふうに考えていくと、歩く場面の演出は、映画にしても実写にしても、すごく難しいことのように思えます。
 登校時・下校時じゃ歩く早さ変えないといけない(朝はせっせと歩かせる)ですしね。
 なお、実際のウォーキングではX Japanの「紅(くれない)」ぐらいのリズムで歩くといいらしいのですが、ぼくにはちょっと無理なんでローリング・ストーンズ「サティスファクション」かな? 「雪の進軍」だと、雪道はいいんだろうけど、ちょっと遅いんだなあ。

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