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砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

黒澤明の映画『羅生門』がアメリカ映画に与えた影響

 だいたい、黒澤明手塚治虫ビートルズに関する本は、とりあえず新刊が出たら目を通してみることにしています。
 創作物が半世紀経っても比較的容易に鑑賞できることと、毎年数冊は新しい情報が入った本が出ていることと、創作者のキャラが立っていて面白いということによります。
 ステュアート・グルブレイス4世『黒澤明三船敏郎』(亜紀書房、2015年)は、黒澤明の映画がどのようにアメリカ人に受け取られたか(影響を与えたか)に関しての視点を提供してくれて、なかなか面白いです。
 黒澤明はまずアメリカ、というか全世界に、こんな監督がいるのか、と新鮮な驚きを与えたのは1951年8月24日、ヴェネチア国際映画祭での『羅生門』(1950年)公開時のことでした。
 なにしろそれまで、商業的レベルで非線形アプローチや多視点テクニックを駆使して、話がまあそこそこ面白い映画というのはなかったんですね。
 アキラ・クロサワとは何者だ? ってことで、「ヴァラエティ」誌の記者「モスク」という人は、スタッフもキャストも区別つかないレポートを書き、最後にこう締めくくります。前掲書P178

『コンセプト、テクニック、演技、熱情というテーマ、どれも素晴らしく、アメリカのアートシアターにとって手堅い投資になるだろう。宣伝価値もあり、評論家たちも飛びつくはずだ。』

 1951年12月6日、映画はロサンゼルスのリトル・トーキョーにあるリンダ・リー・シアターで期間限定の上映が行なわれました。
 それから、大映と提携していたRKOが、会社としてはルネ・クレール『沈黙は金』(1946年)以来2作めの、海外字幕映画として配給することになりました。
 1951年12月26日、映画はニューヨークのリトル・カーネギー・シアターでプレミア上映され、映画評論家に好意的に紹介されました。
 ただ、『羅生門』の高評価は、日本が海外で売る映画としては時代ものがいいんだろ、ということで、そういうのばかり映画祭に出されるという困ったことになりました。
 その後、アメリカではブロードウェイのミュージカルになったり(盗賊役はロッド・スタイガー)、シドニー・ルメットがテレビドラマにしたりして、1964年にはマーティン・リット監督『暴行』という映画になりました。
 映画『暴行』に関しては、著者のステュアート・グルブレイス4世は以下のような評価をしています。P184

『誠意を持って作られた作品ではあるが、『暴行』の雰囲気は、堅苦しく尊大だ。ジェームズ・ウォン・ハウの素晴らしいカメラワークにもかかわらず、そして脇役の素晴らしい演技力にもかかわらず(杣売り転じて探鉱者となったハワード・ダ・シルヴァ、下人転じて詐欺師となったエドワード・G・ロビンソンらが脇を固めている)、主役らのキャスティングが致命的だった。特に、三船の役となる、荒くれメキシカンの盗賊を演じたポール・ニューマンだ。』

 まあ、ポール・ニューマンには荒くれ男の役は向いてなさそうに思えます。

 本日は1226文字です。