砂手紙のなりゆきブログ

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メタフィクション映画(主人公は僕だった)

 主人公のハロルド・クリックは平凡な男。毎日決まった時間に起きて、勤務先の国税庁に行き、決まった時間に寝る。同僚の知り合いはいるが、友だちも家族もない孤独な生活を送っている。
 ところがとある水曜日の朝、目覚めると女性のナレーションが、ハロルドを主人公にした物語を語っている。そして、その語りは全能の第三者視点で「ハロルドは自分が死ぬとは知るよしもなかった」と言う。
 頭がおかしくなったかと思った彼は、精神科医から文学教授に相談し、教授はそのメタな現象と語りに興味を持って、ハロルドを主人公にしているのはどういう人物かを考える。
 また、ハロルドは税務調査で知り合ったベーカリーの若い女主人アナ・パスカルと恋に落ち、ギターを弾き、今までとは違うことをやりはじめる。
 一方、この物語の作者であるカレン・アイフルは、どうやったらハロルドを殺せるか考えていたがどうもいい考えが思い浮かばないので、悩みながらタバコをふかす。
 10年前の彼女のインタビューを教授の家で見たハロルドは、この女性が僕に語りかけてる人だ、と言い、本の出版社まで会いに行こうとするが、受付で「僕はカレン・アイフルの小説の主人公です」と言っても会えるわけがない。
 なんとか国税庁の資料で作者の連絡先をつきとめたハロルドは、カレンに電話をする。
 うまいこと主人公の殺しかたを思いついて、一気に書きはじめたカレンだが、タイプライターで「電話が鳴った」と書くと電話が鳴る。こんな馬鹿なことがあるもんか、とは思うんだけど、作家と主人公は会って話をして、主人公のハロルドはまだ最終稿ではない原稿を作者から借りて、教授に読ませる。
 教授の意見は「傑作だ。でもこの話では、君が死なないと傑作にならない」。
 カレン・アイフルは自分の小説の主人公を殺すのが有名で、今までに8人殺している作家。
 …というのが、映画『主人公は僕だった』(2006年)の、結末まで書いていないあらすじです。
 主人公のハロルドを演じるのは、バカ演技で有名で、ぼくも好きでたまらないウィル・フェレルですが、頭に来て自宅の部屋の家具をこわすところ以外は普通に演技していて、なかなかいい話なのです。教授役はダスティン・ホフマンなんで、身長差が50センチぐらいある。
 とりあえず、メタフィクションをテーマにしている映画というと、これがいつも頭の中に浮かぶのです。
 そう言えば、ウィル・フェレル主演のリメイク版『奥様は魔女』(2005年)も、テレビドラマの新シリーズを作るという変にメタな話だったっけ。

 本日は1043文字です。