砂手紙のなりゆきブログ

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1962年の夏の金井美恵子

 金井美恵子『夜になっても遊びつづけろ』(1974年)は、今となっては猫とサッカーが好きで口うるさいおばあさんですが、当時20代で新進気鋭の作家として石川淳にかわいがってもらった時代のエッセイ集です(この時代に若手だった作家がいくつぐらいの年だったかということを考えると少しくらくらします)。
 本当は彼女の映画エッセイ集を読むつもりだったんだけど、ジョン・フォードのことを語るでもなく語っている随筆には、このようなことが書かれています。

『(19)62年夏、マリリン・モンローが死に、九州を旅行中だった姉が、マリリン・モンローが死んだのよ! と、ひとこといいたいために電話をしてよこした。忘れもしないローレンス・ダレルの『アレクサンドリア・カルテット』の翻訳が出はじめた頃であり、次の年には読売アンデパンダン展がつぶれ、その夏、はじめてわたしは大岡信の『記憶と現在』を読み、倉橋由美子の『蠍たち』を読み、初潮というものを体験し、いっぱし青春へ近づいたという奇妙な昂揚状態にあったのだが(以下略)』

 金井美恵子は1947年11月3日生まれです。
 しかしあれこれ検索しても、倉橋由美子『蠍たち』って、1968年に刊行されたのしか見つからないのよね。同題の短編が小説中央公論に掲載されたのは1963年1月号。
 これは『暗い旅』(1961年10月刊行)と勘違いしてるのかしらん。
 1974年の文芸書の担当者が、これに気づかないわけがないので不思議なのだった。
 金井美恵子の書きかたがへたなので、1962年の夏と1963年の夏が区別つかないのも困る。

 本日は652文字です。