角川春樹と映画に関する孫引き情報
中川右介『角川映画1976-1986(増補版)』(2016年、角川文庫)は、角川映画と称される映画の、おもに初期(全盛期)10年を、1960年生まれの著者が記憶と資料を駆使して書いているとても面白い本です。
この中で著者は、たとえば複数証言があるものはそれを中立的な立場で書き(薬師丸ひろ子がオーディションでどうだったか、とか)、関係者の記述で曖昧なものは日付を確認してまとめています。
でもって、角川映画というと大林宣彦になるんですが、彼は著書『ぼくの映画人生』で、角川春樹が言ったこととして、以下のところを中川右介は引用しています。p128
『ぼくはいま、本屋のおやじ(注:出版社の社長)です。本屋のおやじが、映画が好きだから映画を作っていますと言ったら、全国の本屋に対する裏切り行為でしょう。だから、ぼくが世間に対して言える言葉は、本を売るために映画を作るんですとしか言えない。そのことによってぼくはどんなに誤解されているかもしれないし、ひょっとすると映画嫌いが映画をつくって、本を売って儲けようとしているとか思われているかもしれないけれども、まかり間違ってもぼくは映画が好きで映画をつくっているとは言えない立場にある人間です』
なお、「作って」「つくって」の表記は角川文庫に掲載されたままの通りですが、入力してみるとちょっと気になるな。
この、「とは言えない立場にある人間です」というのはなかなかいいなあ。
ぼくも機会があったら使ってみたい。
本日は618文字です。