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砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

作家・池波正太郎の武勇伝

 小説家の池波正太郎は、戦後の一時期公務員でした(目黒税務事務所で税金の集金を行っていたそうです)。
 そのときの話を彼は随筆「カレーライス」で以下のように書いています。

『私の東京都職員の生活は、はじめに保健所の環境衛生の仕事から、のちに税務事務所へまわされ、渋谷に近いM地区へ勤務することになり、そこの税金徴収員となった。これは各種地方税を滞納した家を一軒一軒とりたてて歩くのだから、もっとも厭な役割であった。
 しかしやって見ると意外にも、二十何人もいる徴収員の中で、私の成績は五番と下らなかった。それでいて私は、ほとんど午前中に、予定した金額を徴収してしまったものだ。そのかわり前の晩は、二時間ほど、じっくりと考えておく。どうしたら滞納者との間にトラブルを起さず、スムーズに滞納金をとりたてられるか……を、である。
 三、四年、この係をやって、いわゆる〔差押え〕の赤札を貼りつけてきたのは、ただの二回にすぎない。
 一度は、かつての某大臣の私邸。
 一度は、共産党員の家。
 双方とも、細君が私に罵詈雑言のかぎりをあびせかけたからだ。
 差押えをして役所に帰ると、大臣私邸では、すぐに、わずかな滞納金をおさめに来て、何事もなかった。
 ところが共産党員のときは、夕暮れになって役所へもどると、門前から玄関にかけて、赤旗が林立している。もっともそのとき、私は共産党員の細君の罵詈をたしなめるため、その頬を一つ張り飛ばしてやったからであろう。』

 その頬を一つ張り飛ばしてやった。
 このエピソードはそのうちウィキペディアに書かれそうな気がするな。

 本日は672文字です。

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