砂手紙のなりゆきブログ

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物語で大切なのは、変わるきっかけを書くこと(コラテラル)

 映画『コラテラル』(2004年)は、殺し屋とタクシー・ドライバーの、ロスアンゼルスでの一夜(だいたい10時間ぐらい)の物語です。
 殺し屋(ヴィンセント)は一晩で5人の殺しを引き受け、そのための専用運転手として優柔不断な男マックスを使います。
 過去の回想シーンは一切なく、ヴィンセントは殺しの仕事を、「50億人のひとりが死んだってどうということない」と、感情を表に出すことがなく話が進みます。
 マックスは自分でリムジンサービスの会社を持つことが夢なのですが、現在の仕事について12年、何の決断もなく(というか、先送りにして)過ごしています。
 このふたりの、現在進行形でしか進まない物語に、ロス市警の麻薬捜査課の刑事であるフィリックスという人物、および女性検事でたまたまマックスが殺し屋の前に乗せたアニーという人物がからみます。
(ちょっとここから先はネタバレ気味になるのでご注意ください)
 過去が語られないヴィンセントはジャズが好きで(マックスはどちらかというと嫌いなほう)、ジャズバーのオーナーでトランペット吹きに対して、「俺の質問に答えられたら見逃してやる」と言って、マイルス・デイヴィスの音楽歴を聞きますが、間違えてしまったので殺します。
 これに関しては、監督のマイケル・マンがかなりの音楽好きで、テレビドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』にマイルス・デイヴィスがゲスト出演したこともある、という豆知識をブログに書いておこう。
 監督と殺し屋役のトム・クルーズは綿密にこの人物の過去を作り、話の中に軽く組み込みます。
 もうひとつは、病院にいるマックスの母親を見舞いに行き、花をプレゼントするところです。マックスは、俺のおふくろは花なんてもらっても喜ばない、と言いますが、ヴィンセントは病院で買った花を渡します。
 ということで、ヴィンセントは過去と関連づけられる形で現在の状況が肉づけられ、ジャズの即興演奏のように、それに合わせてマックスは行動する男(決断する男)に変わります。
 何というか、物語はどういう風に作らないといけないのか考えるのに参考になる映画でありました。
 最後に殺される予定の人物が、あれですよあれ、ってことがわかってからの展開はちょっとありふれてる、というか、こういう風にしかならないだろうなあ、と思ってしまうのがつらいんですが、途中の過程は実にあっさりと人が死ぬ(殺される)ので、そう、あの人もあっさり殺されるんですよ、ええっ、とか思っちゃう、映画のシーンの多くはタクシーの中でのふたりの会話にもかかわらず、なかなか展開が楽しい映画でした。
 例によってカットを刻みすぎるのはもうあきらめました。4人目の韓国人を殺すディスコのシーンは、撮影が大変なのはともかく、本当に(マジで)何がどうなっているのかわからなくて困りました。

 本日は1172文字です。