芝山幹郎はなぜそうも肉体にこだわるのか、それとチカチカ映画の問題(バットマン ビギンズ)
芝山幹郎は著書『映画西口東口』(2015年、Pヴァイン)の中で正確に的(映画『バットマン ビギンズ』(2005年))を射抜いています。正しくは週刊エコノミストの2005年掲載テキストだと思うんだけど、初出はこの本だけでは不明です。P99
『(中略)ところが、そのアクションがいまひとつすっきりしない。なにしろ、クロースアップが多すぎてカットが速すぎるのだ。MTVでお馴染みのこの手法は、末梢神経こそ刺激するものの、空間の全貌を見えにくくする。それだけではない。悪役を演じるリーアム・ニーソンの再登場が遅すぎる上に、その悪だくみが陳腐であまり胸を踊らせない。』
また、森直人との巻末対談では、以下のように述べています。P492-493
『芝山:もともと、いわゆるジョルト・ジャンキーが嫌いで、末梢神経の刺激に対して批判的なんですね。
森:芝山さんは、その「末梢神経の刺激」いうのを一番嫌う言葉として使われてますね。
芝山:嫌がっていますね、明らかに。チカチカした映画が嫌いなんです。』
そうなんだよ、違う監督だけど、話なんか抜群に面白い『キャプテン・フィリップス』(2013年)なんて、なんであんなチカチカした映画になってしまったのか、訳がわからない。
なお、CGとかアニメはあまり好きではなく、あくまでも肉体の延長として使われるべきだという立ち位置から、以下のように言っています。P518
『アニメ、ファンタジーっていうのは何でもありだけど、人体には限界があるでしょ。できることとできないことがかなりはっきりしているんだけど、そこをすり抜けようとする作業が面白い。もちろん、超人的なアクションとかも面白いので、そこでは映画の荒唐無稽の楽しさがまた浮上してきますよね。(後略)』
そう言えば芝山幹郎のアニメ評ってあまり見たことないな。ディズニー&ピクサーやドリームワークスなど、アニメの評価の仕事は多分他の人にまかせているんだろう。『カンフー・パンダ』(2008年)なんて、芝山氏の立ち位置から見ても十分に面白いと思うんだけどな。