砂手紙のなりゆきブログ

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短い結論では話がまとまらないような情報(漫画編集者)

 木村俊介『漫画編集者』(フィルムアート社、2015年)は、現役の漫画編集者5人にロング・インタビューをしてまとめた本です。
 この本の最終章、あとがきの前には「第6章 「問いを見つける職業」を取材してみて」という章が設けられ、木村俊介自身の感じたことが、著者自身の言葉で以下のように語られています。P327-328

『短い結論で話がまとまるような情報を浴び続けざるをえない社会にいれば、発信者がそれぞれちがう人であっても、「あれ、こういう構造の話、よく見かけるよな」という似たような情報にばかり遭遇しがちになる。私自身の感触でいえば、「呼吸が浅くて目的が近くにありすぎる言葉」(たとえば、最終的にはものごとは勝ち負けなんだとか、こうすればすぐに役に立ってトクをするだとか、広義の広告や売りこみに近い「私をほめて」とよくみせたがっているようなエピソードだとか)に、少し疲れてしまっている人も多い時代なのではないか。そうではない情報を掘り下げ、インタビューを通して他人の思考の世界にぐっと潜りこみ、そこで見つけたなにがしかの心象風景を、できるだけまるごとに近い、息苦しくなく深呼吸できるようなかたちの肉声で伝えたいというのが、私が長回しの取材で心がけていることである。』

 この「呼吸が浅くて目的が近くにありすぎる言葉」というたくみな言葉づかいに感心しました。
 本の感想に関してはまたあとで。