砂手紙のなりゆきブログ

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ふりがな(ルビ)のつけかたにはふたつの方法がある(ゴブリンスレイヤー)

 ライトノベル系の文庫は、普通の文庫よりふりがな(ルビ)が余計についています。どういう漢字にふりがなをつけるのかは、どうもよくわからないけど、各社・各ブランドで決まってるんだろうな。
 それはともかく、ふりがな(ルビ)をつける場合、ふたつの方法があります。「右上」につけるか、「真ん中」につけるか、です。
 たとえば、「河豚」って漢字に「ふぐ」ってルビをつける場合、
1・右上法 「ふ(+半字アキ)/ぐ(+半字アキ)」
2・真ん中法 「(4分の1字アキ+)ふ(+4分の1字アキ)/(4分の1字アキ+)ぐ(+4分の1字アキ)」
 たとえば、「決別」に「わかれ」のルビの場合は、
1・右上法 「わか/れ(+半字アキ)」
2・真ん中法 「わ(+8分の1字アキ)/(8分の1字アキ+)か(+8分の1字アキ)/(8分の1字アキ)れ」
 となります。
 つまり、真ん中法だと、「わ」と「か」、「か」と「れ」の間は4分の1字分アキになります。
 まあ多分ここらへんは、比較的機械的にできるから問題ない。
 地名となると面倒ですな。
 たとえば、「神楽坂」だと「かぐら」と「ざか」でルビをつけないといけない。
 右上法だと「かぐ/らざ/か(+半字アキ)」でもだいたい大丈夫。
 ルビが3字になるとどうやるかというと、漢字の上下に4分の1字分の空白を作ります。
 たとえば、「龍」に「りゆう」ってルビをつける場合は、漢字のところを「(4分の1字アキ+)龍(+4分の1字アキ)」にします。
 それが「ドラゴン」というルビなら、漢字の上下のアキは半字分の空白になります。
 割と簡単そうでしょ。でもこれ、漢字の意味を考えて職人が手でコツコツやらないといけないのもありそうなんだよね。
 たとえば「不可触領域」。
 ずぼらにやっていいなら「ふか/しよ/くり/よう/いき」で全然問題はないんですよ。角川のスニーカー文庫だと、それに近いルビにしているのもあります。
 でもってびっくりしたのは、GA文庫(SBクリエイティブ)の『ゴブリンスレイヤー』(蝸牛くも、2016年)。
 第一章冒頭5行、ルビの部分をカッコで示します。

『その男は反吐(へど)が出るような戦いを終え、息の根を止めたゴブリンどもの屍(しかばね)を蹂躙(じゅうりん)する。
 薄汚れた鉄兜(てつかぶと)と革鎧(かわよろい)、鎖帷子(くさりかたびら)を纏(まと)った全身は、怪物の血潮(ちしお)で赤黒く染(そ)まっていた。
 使い込まれて傷だらけの小盾を括(くく)りつけた左手には、赤々と燃える松明(たいまつ)。
 空(から)の右手が、踏み付け抑えた死骸(しがい)の頭蓋(ずがい)から、突き立った剣を無造作に引き抜く。
 脳漿(のうしょう)をべったりと纏わせた、あまりにも中途半端(ちゅうとはんぱ)な長さの、安っぽい作りの長剣。』

 この本は、真ん中法でルビがついています。で、「屍」の場合は上下に半字分の空白、「蹂躙」の場合は「蹂」の字の上下に4分の1字分の空白がつきます。
 で、注意したいのは、「鉄兜」の場合は当然「兜」の字の上下に空白をつけるんですが、「革鎧」も同じようにやると、そのあとが「、(読点)」なんで実にかっこ悪くなる。だから「鎧」の上の部分に半字分の空白を作って、「鎧」と「、」の間には空白を作らない。
 つまり、「蹂躙」「鉄兜」「革鎧」のルビの技法が全部違う。唖然。
 こんなの、別に「蹂躙」なんかは「じゆ/うり」ってルビにして、はみ出した「ん」を「する」の「す」の部分に半分つけておいても読む側には問題ないんですよね。
 でもって、「中途半端」は、「中途」と「半端」に分けてルビしてる。
 すごい。
 なお、こんなことを知ってたり気にしたりしていても、ライトノベルを読む速度が遅くなるだけですが、自分のこの記事を読んだあなたは多分、気にしはじめるんだろうなあ。
 ざまあみろ、みたいな。
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