砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

実写でカメラが引いていく演出で「うわーっ」って感心する(大人は判ってくれない)

 映画『大人は判ってくれない』(1959年)はフランソワ・トリュフォー長編初監督作品で、悪童のアントワーヌ・ドワネルが学校をサボって言い訳に「お母さんが死んだ」とか嘘ついたり、作文でバルザックを丸写しにして怒られたり、金を稼ぐためにタイプライターを盗んだりするフランス映画です。家庭環境も含めてかなりひどいアントワーヌなんですが、どうも日本の映画と比べるとグチや説教が少なく、湿っぽい感じはあまり受けません。単にフランス語でのののしりあいだからニュアンスが直で伝わってこないだけなのかな。それはともかく、トリュフォー監督の「映画作るのって楽しい」感があふれてて、見てて楽しい映画でした。なんかヌーヴェル・ヴァーグの映画ってアンチ・ロマンなフランス小説みたいなイメージあったけど、伝統的映画の破壊ではなくて再構築なのかな。
 ちょっと、へー、と思ったのが、留置場に入れられることになる主人公のところのショット。このエピソードって、ヒッチコックの少年時代の体験をネタにしているのかな。ヒッチコックが父親とその知り合いの警察署長によって(冗談で)留置場に入れられた、というのは、本人の証言以外に確認取れてないんですけど。
 で、こう、廊下を少年と警官が歩いてくところを撮して、それが「留置所の出入口のドアの窓から見たショット」になって、警官がそのドアを開ける、というのにはちょっと驚きました。
 場面変わって、留置場に一緒に入れられてる男が会話してて、そこからカメラがズームアウト(用語的にはドリーアウトかな)すると、監視役の警官が、わきで小型エレベーターで運ばれてきたもの(多分新聞)を、ひょいって受け取る。
 こういう演出って、どうも演出家の個性が出すぎるせいなのか、アニメ的にはむずかしい技法なのか、実写以外ではあまり見ない気がします。実写でもめったに見ない。
 最後の、アントワーヌ少年がどこまでも走るシーンをどこまでも撮し続けるカメラ、すばらしいです。
 わりと「えんえんと○○する」って描写が多い映画なんだけど、料理を作るシーンは最初から最後まで撮ったりはしてくれないんだよなぁ。

f:id:sandletter:20140423231540j:plain