砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

ルソーと大航海時代(社会契約論)

 ジャン・ジャック・ルソーは18世紀フランスの思想家で、単なる哲学者の枠を越えた多芸多才の人でした。膨大な量の書物と当時の一次資料から世界の文明・文化を見渡していると彼は、さまざまな異なる文化の中であっても「理由なしに人を殺してはいけない」というような普遍的なルール(社会的な約束事)があることに気がつきました。大航海時代はルソーの時代にはほぼ一段落して、異文化に関する研究がじわじわと西欧の一般知識人に広まっていたころです。
 彼はそれを「一般意思」と名づけ、『社会契約論』(1762年)で論を展開し、王権神授説に対抗する近代の民主主義の基礎となり、「理由があったら人を殺してもいい(人権の制限が可能である)」という、マルキシズムその他、その歪んだ解釈にもとづくさまざまな革命は、さまざまな独裁者による虐殺を、もっぱら20世紀において招くことになりました。
 日本では1882年に中江兆民が『民約約解』として『社会契約論』を紹介し、自由民権運動の思想的基盤となり、1889年日本帝国憲法の公布ということになりました。
 戦後公布された日本国憲法は当時のGHQ民政局長コートニー・ホイットニーを影で支えたアメリカの若いリベラル思想者の意見が多分に反映されたものですが、その中で「基本的人権の尊重」は以下のように語られています。

第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 日本国憲法の中では、前文の次にすばらしいテキストじゃないかと思ってます。