砂手紙のなりゆきブログ

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若山牧水『海の声』のやっかいな問題

 若山牧水は戦前の短歌人で、歌と旅と酒を愛し、日本各地に歌碑があることで有名です。
 第一歌集『海の声』(1908年)の序文には以下のようなテキストがあります。

『われは海の聲を愛す。潮青かるが見ゆるもよし見えざるもまたあしからじ、遠くちかく、断えみたえずみ、その無限の聲の不安おほきわが胸にかよふとき、われはげに云ひがたき、悲哀と慰籍とを覺えずんばあらず』

 どのテキストでもだいたいこうなってるんですが、「慰籍」という語はありません。
 Google辞書変換の「もしかして」検索で出てくる通り、「慰藉(いしゃ)」の誤字じゃないかと思うんだよな。
 慰謝料の「いしゃ」と同じ意味。戦後使われなくなりました。
 要するに、かなしみとなぐさめの気持ち。
 冒頭の、割と有名な誤字なんで、全国の高校レベルの国語教師ならみんな知ってると思うんだけど、ネットではうまく確認できなかったのでここに記しておきます。
 こういうの、著者が死んじゃったらもうどうしようもない。

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