砂手紙のなりゆきブログ

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劇場アニメ『心が叫びたがってるんだ。』と『オズの魔法使』との関係

 劇場アニメ『心が叫びたがってるんだ。』では1939年のミュージカル映画オズの魔法使』の中で歌われる「虹の彼方に(Over the Rainbow)」が重要な曲として扱われます。
 この映画に嫉妬したディズニーは1940年、映画『ピノキオ』の中で「星に願いを(When You Wish upon a Star)」という似たような感じの曲をジミニー・クリケット(淫獣の元祖みたいな奴)に歌わせ、多くの人を混乱させたあげく、こっちのほうはディズニーのテーマ曲みたいになりまして、日本では西郷輝彦「星のフラメンコ」(1966年)が何となくそれのパクリっぽく聞こえます。嘘だと思うなら聞いてみるといい。
 それはともかく、『心が叫びたがってるんだ。』の初期のキャラ設定は、オズの魔法使(魔法使い)のキャラに依拠しているようにも思えます。
 ヒロインの成瀬順=ドロシー
 何も考えていない坂上拓実=ドロシーに杭から降ろしてもらって動けるようになる、頭にワラしか詰まっていないカカシ
 ひじをこわして野球部を休んでいる体の大きい田崎大樹=雨にうたれて体がさびついて動けなくなったところを、ドロシーたちに油をさしてもらって動けるようになる、力はばつぐんだが心(ハート)がないことが悩みのブリキのきこり
 チアリーダー部の部長で男子・女子ともに人気のある優等生だが、過去の事件で坂上拓実に対して負い目を持っている仁藤菜月=森の中では百獣の王とその外見で恐れられているが、本当は臆病なライオン
 作中では『オズの魔法使』をみんなに先生が見せるエピソードがあり、それに釣られて、ちょっと見てみようかな、と思う人もいるかもしれませんが、まああまり期待しないほうがいいかもしれない。
 2013年の映画『オズ はじまりの戦い』のほうがまだ少し面白いぐらい。
 ただ、ミュージカル映画にしてはあまり派手に踊ったりしないんで、フレッド・アステアの人外な踊りを見て「素人にはミュージカルなんて無理だよなあ」と高校生を絶望に陥らせることはないです。
 アニメ作る人も、こんなのアニメにできない、と絶望感に陥ることがないし(金をかければフレッド・アステアみたいな踊りの出てくるアニメもできないことはないかな)。
 高校生に見せたい映画はバスター・キートンの映画ですね。
『文化生活一週間(キートンのマイホーム)』(1920年)とか『キートンの警官騒動』(1922年)とか、くだらないだけでよくまあこんな話が作れるな、とか思う。
 問題は…それを舞台劇でやることにすると、成瀬順はしゃべらなくても何の問題もないことです。
 成瀬順もケータイのテキストじゃなくてパントマイムで坂上拓実と会話して欲しい。
「丸? テニスボール? そうじゃなくて…ラドン? もっと小さくて…スズメ? それより大きくて…そうやって鳴くのは…ニワトリ? それのおっぱいあるほうだから…えーと、メンドリ? うずくまって…玉子? でもって、それは置いといて…」
 ぼくが求めているのはこんなアニメです。