砂手紙のなりゆきブログ

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映画『ブレードランナー』(1982年)以前のフィリップ・K・ディックの日本での知名度

 映画『ブレードランナー』(1982年)以前のフィリップ・K・ディックの翻訳状況について考えてみます。映画の公開は、日本では1982年7月、アメリカでは6月のことでした。
 なにしろ30年以上前のことなんで、今となってはフィリップ・K・ディックはSFを読む者の基本図書になっておりまして、今の人は原作の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1968年)の翻訳を読んで「映画と全然違うけど面白い」ということになって、ディックの短編・長編の手に入れられるだけを読んでしまうことになります。
 1982年までに翻訳が出ていたフィリップ・K・ディックは以下の通りです。
・『宇宙の眼』1959年(1970年に世界SF全集の1冊としてベスター『虎よ、虎よ!』とあわせて刊行)
・『火星のタイム・スリップ』(1980年に文庫化)
・『高い城の男』1965年(改訳が文庫になるのは1985年)
・『太陽クイズ』1968年(1977年に『偶然世界』として文庫化)
・『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』1969年(1977年に文庫化)
・『逆まわりの世界』1971年(1983年8月に文庫化)
・『地図にない町』1976年(日本オリジナル短編集)
・『時は乱れて』1978年
・『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』1978年
・『ユービック』1978年
・『死の迷宮』1979年
・『暗闇のスキャナー』1980年
・『流れよ我が涙、と警官は言った』1981年
 たったこれだけ。
 とはいえ、『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』『ユービック』『流れよ我が涙、と警官は言った』と、ディックの中でもわかりやすくて面白いのが比較的入手が容易で、『太陽クイズ(偶然世界)』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『火星のタイム・スリップ』も文庫で読めたんだから悪くないと思う。『高い城の男』『逆まわりの世界』『宇宙の眼』が翻訳で読むには少し入手難だったかもですね。
 多分英語だったらもっといろいろディックが読めたんじゃないかと思う。
 ヴァリス三部作が大瀧啓裕の訳でサンリオから出たのは1982年5月からなんで、意外に遅く、そこからディックのブームが生まれます。
 やっかいなのは短編のほうですかね。
 浅倉久志氏が積極的に短編集の翻訳をはじめるのは映画『ブレードランナー』公開以後で、それまでは仁賀克雄という人が日本で一番ディックが好きな人でした。